研究課題
卵巣癌・卵管癌・子宮内膜癌をモデルに、病変部におけるマクロファージの特徴を検討したところ、内膜症を背景とした癌部では免疫染色においてCD163 (+) CXCL4 (-)マクロファージが主体であり、さらにIFN-γ高発現EAOC症例においてsuppressor of cytokine signaling 1 (SOCS1)が減弱している知見を得ている. SOCS1発現の主体は浸潤マクロファージであり、内膜症では発現が認められるのに卵巣癌部では発現が明らかに低下していた. これらの知見は定量RT-PCRやWestern blotでも有意な差が確認された。さらにmiRNA検索でmiR30dとmiR155に関連が示唆されるデータを得た。どのような細胞内シグナル経路が関与しているかを確認するために目的細胞を単離してDNAを抽出し、JAK-STAT経路を中心に解析中である。また、子宮内膜ポリープを背景として閉経期に発症する高悪性度の微小漿液性腺癌 (SEIC)について、病変部からlaser capture microdissection (LCM)を施行して腫瘍細胞のみを単離しDNAを抽出後、クロマチンリモデリング遺伝子として近年注目され始めている(Nat Genet 2012; 44: 1310-1315) FBXW7遺伝子のシーケンスを施行した。検討した6例中1例においてp.R505Cのミスセンス変異が同定された。これらのSEICではいずれも免疫染色においてFBXW7蛋白レベルの発現低下とその下流にあるcyclin Eの発現亢進が認められ、検索範囲内に変異が認められないSEICであってもFBXW7遺伝子による細胞周期調節に異常をきたしている可能性が強く示唆された。
3: やや遅れている
症例集積において術前化学療法を施行する例が増えたため、末梢血を用いた検索に影響が出ており、採取方法を組織検体からのlaser capture microdissection (LCM) にシフトしている。LCMでは微小検体からも目的DNAやmRNAが比較的高精度に抽出できるため、予定を一部変更してLCMによる癌部や境界病変の単球や腫瘍細胞を単離して、IFN-γ高発現状況下でSOCS1の発現を負に調節する機構を遺伝子レベル検討している。また卵巣癌・子宮内膜を巻き込む癌症例においては病理学的に進行癌か重複癌か鑑別が困難な例も少なくないため、beta-cateninの免疫染色態度に違いが認められるものを主たる対象にPTEN変異とCTNNB1変異のパターンを解析に加え、補助的病理診断への有用性も複数症例で検討している。
SOCS1の下流にあるJAK-STAT経路分子の発現を定量的および組織学的に解析し、特異な炎症性微小環境がもたらすシグナル変化を多数例で検討する。また、体細胞レベルでの腫瘍上皮CTNNB1変異やFBXW7変異などの遺伝子不安定性とどのように協調して腫瘍発育に関与しているのかが新たな課題として見つかった。前癌病変部における細胞状態をCNV解析で検討するなど、コピー数変化に関しても明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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