研究課題/領域番号 |
26460424
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大森 斉 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (80213875)
|
研究分担者 |
國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 脂肪酸 / がん幹細胞 / シグナル / 転移 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の研究計画に従い、リノール酸・エライジン酸の各脂肪酸処理時の遺伝子発現変化、および、マイクロRNAの発現変化についてアレイ解析による比較検討を行った。 DNAアレイを用いた発現解析では、エライジン酸では、HGF, linsulin, EGFRなど増殖系の遺伝子発現が促進されるのに対し、δ-notch, HH, retinoid receptorなど分化誘導関連遺伝子の発現低下が見られた。一方、リノール酸では、TGFβの発現亢進、糖代謝関連遺伝子群の発現亢進が見られ、細胞周期関連遺伝子や増殖シグナル関連遺伝子の発現が低下していた。これに対して、インテグリン関連因子などアポトーシス抑制遺伝子の発現は両者で亢進していた。 マイクロRNAアレイを用いた発現解析では、エライジン酸では、発現亢進が31種で、発現低下が3種で見られた。一方、リノール酸では、発現亢進が13種に見られ、発現低下を来したものは認められなかった。両者に共通して発現亢進が見られたものは3種であった。これらのマイクロRNAに既にその機能が明らかにされているものはほとんど見られなかった。今後は、個々のマイクロRNAについて、その機能を検討し脂肪酸シグナルへの役割を検討して行く予定である。 本年度は脂肪酸の標識化を予定に入れており、13Cを用いた標識は容易に行うことが可能であるがイメージングに使用できない。イメージング用に蛍光標識を行ったが脂肪酸分子に対する標識のサイズが比較的大きいため、その生理的影響を評価しつつある。 もう一点の、ラフト外細胞膜の脂肪酸定量については上記13C標識脂肪酸を用いて検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画には、(1)標識脂肪酸の作成、(2)DNAアレイによる遺伝子発現変化の解析、(3)脂肪酸によるマイクロRNA発現変化、(4)細胞形態・可塑性・浸潤能・運動能の検討の4点を挙げており、いずれのテーマにおいても結果が出ている、もしくは、結果が出つつあるところまで進捗している。このため、平成27年度の研究計画にスムーズに移行可能と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度研究計画では、細胞膜への脂肪酸組込、ラフトによるシグナル形成と癌転移能、脂肪酸の間葉系幹細胞への影響、および、リノール酸・エライジン酸の受容体・シグナルの癌細胞の幹細胞性への影響が挙げられており、それに従って研究を実施する。 平成26年から継続するものとして、細胞膜への脂肪酸組込を引き続き行う。 また、アレイ解析により抽出された遺伝子群・マイクロRNAの各脂肪酸のがん幹細胞における役割との関連について個々の遺伝子・マイクロRNA、または、そこから考えられるシグナル経路について検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究計画には、13C標識脂肪酸を用いた局在解析を行う予定であったが、これが平成27年度にずれ込んでいる。局在解析に必要な質量分析は外注に頼らざるを得なく、平成27年度に持ち越した助成金は本来26年度に13C標識による実験施行とその後の質量解析に用いる予定であった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に、上記のように本来26年度中に施行する予定であった13C標識による実験施行とその後の質量解析を行うため、持ち越した助成金はこれに使用する予定である。
|