研究課題/領域番号 |
26460425
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
福嶋 敬宜 自治医科大学, 医学部, 教授 (40384937)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵癌 / 膵管内腫瘍 / 前癌病変 / 癌間質 / 肥満細胞 / 微小環境 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,膵管癌の発育進展に関わる微小環境(癌関連線維芽細胞,血管・リンパ管内皮細胞や免疫細胞など)が,膵管癌の前駆病変のどの段階で形成されて膵癌細胞との相互作用をきたすようになるのかを明らかにすることである。 最近,膵癌の周囲間質に浸潤する肥満細胞が腫瘍促進性に働いていると報告されてきてことから、H26年度は,膵癌前駆病変の一つである膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN)の周囲間質に浸潤する肥満細胞について検討した。IPMN82例 (86病変)と、正常膵15例を対象とし、c-kitの免疫染色を行い、間質に浸潤する肥満細胞数を計測した。また、IPMN上皮直下の浮腫、炎症細胞浸潤、周囲間質の粘液漏出、萎縮・線維化、リンパ濾胞、充うっ血について、その有無や程度を評価し、間質に浸潤している肥満細胞数との関連を検討した。 結果の概要:正常膵と比べてIPMN周囲間質では異型度や組織亜型と関係なく、肥満細胞数が有意に増加していた (9.3個/HPF vs 24個/HPF, p<0.001)。一方、IPMN由来癌症例においては、浸潤部周囲間質の肥満細胞数は、正常膵よりは多い傾向があるものの、膵管内病変周囲間質と比べると有意に少なかった (23.3個/HPF vs 12.3個/HPF, p=0.004)。また間質所見との詳細な比較検討により、間質に浸潤している肥満細胞数はIPMN上皮直下の浮腫や炎症細胞浸潤との関連が示された (p<0.001 and p=0.017)。 以上のこれまでの検討から,膵癌のみならず、その前駆病変であるIPMNの発育・進展にも肥満細胞が関与している可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵管内腫瘍(IPMN)と膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)の腫瘍周囲組織の病理組織学的解析に加え,正常膵管周囲に比べIPMN周囲に有意に肥満細胞の浸潤が増加していることを明らかにしたが,計画していた「既存の膵癌の網羅的遺伝子発現解析データから微小環境関連分子を探索し,膵癌の前駆病変においての発現,局在を明らかにする」には,至らなかった。計画通り進まなかった理由は,80例のIPMNの病理組織標本の全レビューや多数種類の免疫組織化学の追加などのため,その実施や評価のためのマンパワー不足であった。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は,既存の膵癌の網羅的遺伝子発現解析データ,網羅的マイクロRNA解析データから微小環境関連分子を探索し,膵癌の前駆病変においての発現,局在を明らかにするため,2名の研究者の協力を得て実質的な研究を進めることができそうであり,予定より早期での成果も望める。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析症例の病理標本のレビューと症例,標本の選定などに時間がかかったため,予定していた免疫組織化学やin situ ハイブリダイゼーションなどの実施が遅れ,結果として予定していた試薬類の購入および実験の実施を次年度に行うことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に行えなかった免疫組織化学やin situ ハイブリダイゼーションなどに進み,試薬等を購入する。
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