研究課題
本研究の目的は,膵管癌の発育進展に関わる周囲環境,膵癌細胞との関係を明らかにすることである。①膵管癌の前駆病変として知られている膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)について、その発育進展過程で、IPMN周囲に正常に比べて有意に肥満細胞の浸潤が見られることを明らかにした。②IPMNについては、膵管内腫瘍の悪性化と関連するマーカーの探索を行い、MUC13がIPMNの異型度や臨床予後との有意な相関を示すことを見出し、術前診断に有益となる可能性を示した。③近年、膵癌の前癌病変の1つとしてAtypical flat lesion(AFL) の概念が提唱され、すでにこの病変の段階からその周囲に線維増生が見られるなど、微小環境の変化が示唆されるため、我々はヒトにおけるAFLの意義を検討した。膵切除標本405例を検討した結果、およそ70例(約18%)においてAFL及びその類似病変を見出した。ヒトにおけるAFLは家族性膵癌においては確認されるが、孤発性膵癌においてはほとんど認めないとの報告がある。我々の結果はそれより高い頻度である他、非膵癌症例における背景膵においてもAFLが確認された。また1例でp53の過剰発現があり、膵癌前駆病変としての可能性を再確認した。④膵管癌において、リンパ節転移は予後不良因子であり、またリンパ管侵襲も予後不良因子と考えられてはいるが、その定量的研究や腫瘍結節におけるリンパ管侵襲像の分布などはほとんど検討されていない。リンパ管侵襲の意義を明らかにするために膵癌の最大割面でのリンパ管侵襲の具合を検討した。その結果、膵癌周囲のリンパ管侵襲の分布に明らかな偏りが見られること、2か所、5か所のリンパ節侵襲の有無で予後が大きく異なることを明らかにした。以上、膵癌の前駆病変であるIPMN、AFLでの検討を主体に膵管癌の発育進展の一端を明らかにしてきた。
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