今回の研究では、子宮内膜癌細胞において上皮間葉転換(EMT)と癌幹細胞(CSC)との関連があることが明確となった。 STK2で培養した子宮内膜癌細胞が線維芽細胞様の紡錘形へと形態が変化し、E-cadherinの発現低下とSlugの発現上昇によってEMTが誘導された。臨床検体の免疫染色でも、Slugのスコアは癌成分に比べて肉腫成分で有意に高かった。また、STK2で培養した細胞がCSC化した状態であることは、それはALDH1活性の高い細胞の増加とスフェロイド形態を示す細胞の増加によって証明された。癌細胞由来の間葉系幹細胞が子宮癌肉腫における肉腫成分の確立に必要である可能性がある。 STK2で培養した細胞はSox4、Sox7及びSox9の発現を促進した。Sox4遺伝子のプロモーター活性は、Sox7により著明に上昇し、免疫染色においてSox4とSox7に強い正の相関がみられた。 STK2で培養した子宮内膜癌細胞ではSlugとSox4が共に過剰発現している。Sox4を一時的にトランスフェクトすることでSlugのmRNA発現が増加し、プロモーター活性にも同様のことが証明された。Sox4はSlug遺伝子のプロモーター領域の-2125~-813bpの間にある4つの結合領域を認識し、Slug発現を促進させる。この3つの効果は、Sox9やSox7との共発現によってさらに強調された。 Sox4はβ-cateninを介してSlug遺伝子の転写活性を上昇させており、β-catenin、Sox4及びp300との転写複合体を形成していた。Sox4によるSlug遺伝子のプロモーター活性の上昇は、TCF4陰性優位の状態でも棄却されなかった。このことは、このプロモーター活性にTCF4の結合領域は必要とされないことを意味していると考えられた。
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