研究実績の概要 |
これまでの解析で、胃底腺型胃癌の発育進展にはWntシグナル伝達系の活性化に加え、GNASやKRAS遺伝子変異など複数の遺伝子異常が関与していることが示唆された。その後の解析で、粘膜内に止まる胃底腺型腫瘍/胃底腺主細胞異形成おいてて、その浸潤能獲得にはWntシグナル伝達系の活性化が必要である可能性が示唆された。また、脱リン酸化酵素であるPP2A遺伝子変異も胃底腺型腫瘍の発育進展に関与する可能性も初めて示された(Lee S-Y, et al. Virchow Arch 467:27-38, 2015)。 また、胃底腺だけでなく腺窩上皮や粘液腺への多様な分化を伴う胃底腺型胃癌の組織亜型である「胃底腺粘膜型」胃癌が新たに発見され、純粋な胃底腺型胃癌A群(n=34)と胃底腺粘膜型B群(n=16)の2群に分類し臨床病理学的に比較検討を行った。B群はA群に比較して平均腫瘍径(A/B=10/24.2mm,p<0.05)、平均SM浸潤距離(A/B=279/1182μm,p<0.05)が大きく、脈管侵襲陽性率(A/B=2.9/37.5%,p<0.01)が優位に高い結果であった。B群はGAFGに比較してMUC5AC・MUC6優位の細胞分化を伴い、高悪性度と考えられ、胃底腺粘膜型胃癌と純粋な胃底腺型胃癌の区別の妥当性が示唆された。 さらに、胃底腺型胃癌の比較対象となる通常型胃癌の解析結果ではあるが、胃癌や腺腫における脂肪滴関連タンパクであるadipophilinの発現様式の違いやその発現と腸型分化との関連が示され、癌と腺腫の鑑別のマーカーになり得ると考えられた(Gushima R, et al. Virchow Arch 468: 169-177, 2016 )。
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