研究実績の概要 |
これまでの我々の解析において、胃底腺型胃癌の発育進展にはWntシグナル伝達系の活性化に加え、GNAS遺伝子変異など複数の遺伝子異常が関与していることを示してきた(Hidaka Y, et al. Hum Pathol 44: 2438-2448, 2013、Nomura R, et al. Hum Pathol 45: 2488-2496, 2014、Lee S-Y, et al. Virchow Arch 467:27–38, 2015)。 過去の報告や我々のこれまでの解析結果から、胃底腺に関連した病変におけるWntおよびSomic hedgehog (SHh)シグナル伝達系の関与を考慮すると、胃底腺型胃癌の発生においてもWntおよびSHhシグナル伝達系の関与のcrosstalk mechanismが働いている可能性が極めて高いことが予測された。SHhシグナル伝達系関連蛋白Patched (Ptch)、smoothened (Smo)、glioma-associated oncogene-1 (Gli1)に対する抗体を用いた免疫染色を施行し、胃底腺型胃癌ではこれらの蛋白発現が周囲粘膜および対照群の通常型胃癌より低下していることが示され、SHhシグナル伝達系の抑制が胃底腺型胃癌の進展に関連していると考えられた。また、KRASとBRAF遺伝子変異も27例で調べたが、変異は認めなかった(投稿中)。 また、Wntシグナル伝達系に関与する遺伝子であるAPC、SFRP、AXIN2は胃底腺型胃癌では胃底腺ポリープ(腫瘍化を伴うものも含む)より高頻度にメチル化を認め、胃底腺型胃癌の進展にWntシグナル伝達系に関与する遺伝子の一部のメチル化が関与していることも示された(Murakami T, et al. Pathol Int 67: 147-155, 2017)
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