研究実績の概要 |
十二指腸における胃上皮化生、異所性胃粘膜および腺癌計177病変を対象に遺伝子変異解析を行い、活性型GNAS変異を胃上皮化生の41%、異所性胃粘膜の28%、腺癌の17%に同定した。また、活性化型KRAS変異を胃上皮化生の26%、異所性胃粘膜の2%、腺癌の37%に認めた。さらに、腺癌を対象として免疫染色を行ったところ、活性化型GNAS変異を有する腫瘍は全てMUC5ACをびまん性に発現していた。MUC5ACは胃腺窩上皮に特徴的な分泌型粘液であり、正常の十二指腸では認められないこと、さらにGNAS変異を共通の遺伝子異常として有している事から、胃上皮化生および異所性胃粘膜は十二指腸における胃型腺癌の前駆病変である可能性が示唆された(Br J Cancer. 2015 112, 1384-1404). 近年、幽門腺腺腫が家族性大腸腺腫症(FAP)における胃病変として新たに提唱されている。しかしながら、散発性の幽門腺腺腫は炎症や萎縮を伴う粘膜に発生するのに対して、FAPに伴う幽門腺腺腫は炎症や萎縮の無い粘膜に発生するという異なる背景を有している。本研究ではFAPに伴う胃病変を対象として遺伝子変異解析を行い、活性化型GNAS, KRAS変異を高頻度に同定し、これら異なる背景に伴う幽門腺腺腫が共通の遺伝子変異を有している事を明らかにした。さらに、FAPの原因遺伝子であるAPCの変異を解析し、散発性およびFAPに伴う幽門腺腺腫がともに高頻度に不活化型変異を有している事を示した(Histopathology. in press)。
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