研究課題/領域番号 |
26460434
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木村 徳宏 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40445200)
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研究分担者 |
池田 栄二 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30232177)
石井 文彩 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50634747)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 病理学 / 癌 / 細胞・組織 / 脳神経疾患 / 脳腫瘍 |
研究実績の概要 |
平成26年度はまず、ヒト膠芽腫由来培養細胞株T98G、U87を用いて、スフェロイド培養の方法の確立を行った。培養ディッシュを2mg/平方センチメートルのpoly(2-hydroxyethyl methacrylate)でコーティングし、細胞を5万個/平方センチメートルの密度で播種すると、3日以内に径400~800μmのスフェロイドが多数、再現性よく形成され、これが最適な条件と考えられた。一方、細胞密度を数千個/平方センチメートル以下とすると、形成されるスフェロイドの径は著明に減少した。培地に関しては、これらの細胞株の通常培養に用いるのと同じ10% FBS含有MEM培地か、ニューロスフェア培養によく用いられるB-27、EGF、basic FGFを添加したDMEM/F-12培地を用いたが、いずれの培地においてもスフェロイドの形成は可能であった。このようにして形成されたスフェロイドのホルマリン固定パラフィン切片を作製し内部を観察したところ、細胞は表層から深部までviableであることがわかった。次に、マルチガスインキュベーターを用いてスフェロイドを低酸素濃度(1%~5%)で培養したところ、10% FBS含有MEM培地では、条件によってスフェロイド中心部に壊死が出現することがわかった。一方、B-27、EGF、basic FGFを添加したDMEM/F-12培地ではそのような所見ははっきりしなかった。スフェロイド切片を用いて、幹細胞マーカーとしてNANOG、増殖マーカーとしてKi-67の免疫染色を行ったところ、T98G細胞株のスフェロイドでは多くの細胞がNANOG陽性となり、膠芽腫切除標本の組織切片での所見に類似していた。スフェロイド内のKi-67陽性細胞の分布に関しては、条件により変化する可能性があり、現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再現性よく膠芽腫培養細胞のスフェロイドを作製する方法・条件を確立することができ、スフェロイド培養を低酸素条件下で行った時の変化についても知見を得ることができた。また、スフェロイド切片における幹細胞マーカー、増殖マーカーを免疫染色にて検討し、膠芽腫切除検体の組織切片における所見と対比を行った。スフェロイドの低栄養条件での培養についての検討は遅れているものの、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は低酸素条件および低栄養条件などにおけるスフェロイド培養についてさらに検討を行い、スフェロイド内の細胞にどのような変化が起こるか、組織像、幹細胞マーカー、増殖マーカーなどの点から明らかにする。腫瘍幹細胞機能の変化が示唆された条件については、ニューロスフェア形成アッセイなどの方法で幹細胞機能の変化をより明確に検討する。そのことにより、腫瘍幹細胞機能に影響を与える微小環境因子を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究計画はおおむね順調に実施できているが、スフェロイドの低栄養条件での培養、NANOG以外の幹細胞マーカーや細胞死マーカーの免疫染色の最適化については検討が遅れており、その分の試薬費用等が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に、スフェロイドの低栄養条件などでの培養の検討、幹細胞マーカー・増殖マーカー・細胞死マーカーの免疫染色の検討を予定しており、それらに使用する計画である。
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