研究実績の概要 |
[目的] R-spondin/Lgr6(ヒト幹細胞マーカー)受容体シグナルはWnt/β-cateninシグナル伝達系を増強する。本研究では肺癌(幹)細胞におけるR-spondin/Lgr6シグナル伝達系の発現ならびに遺伝子変異解析を目的とする。 [材料と方法] Lgr6遺伝子の各構成exonに対するプライマーを作成し、ヒト肺癌細胞株(A549, PC9)およびヒト気道上皮細胞株(VA10, BEAS2B)からgenomic DNAを抽出し、Lgr6遺伝子の全exonに対する変異解析をdirect sequencing法を用いて行う。次に、Lgr6プロモーター領域の非メチル化、メチル化特異的PCRプライマーを設計し、各PCRによるメチル化解析を行う。また、ヒト肺癌症例からgenomic DNA抽出を行い同様のLgr6変異解析を行う。最後に、Lgr6の野生型遺伝子のクローニングと、前述の解析で得られた新たな変異部位を含む変異型Lgr6遺伝子のクローニングを行い、Lgr6の肺癌(幹)細胞における機能と意義につき考察する。 [結果と考察] Lgr6遺伝子のexon1~20に対する全exon解析から、exon3, exon16に1カ所、exon20に3カ所の一塩基置換型の変異を認めた。このうち、exon16の一か所、exon20の二カ所はsilent mutationであったが、exon3, exon20の一か所はこれまでに報告の無い新たな有意な一塩基置換型の変異であった。また、メチル化特異的PCR解析から、A549ヒト肺腺癌細胞株においてLgr6プロモーター領域のメチル化が検出された。以上の結果より、肺癌においては、Lgr6遺伝子の変異あるいはプロモーター領域のメチル化の機構によりLgr6発現が抑制されていることが考えられ、Lgr6遺伝子発現抑制機構の機序の一端を解明できた。
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