研究課題/領域番号 |
26460438
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
土橋 洋 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90231456)
|
研究分担者 |
北川 雅敏 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50294971)
坪地 宏嘉 自治医科大学, 医学部, 准教授 (50406055)
後藤 明輝 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90317090)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 肺癌 / Akt / ubiquitin ligase / microRNA / p27 / Pirh2 / MLPA |
研究実績の概要 |
肺癌において、増殖シグナルエフェクター蛋白質であるAktを中心とした系の異常、活性化制御を解析した。 1. AKT1、AKT2遺伝子のみの増加群で変動するmicroRNA(miR)をmiR arrayでscreeningし、i) miR-200aは腺癌、早期の癌(Stage-I,II)ではAKT2により亢進する、ii) miR-200a,b,cともリンパ管侵襲とは負の相関を示すが、血管侵襲とは相関しない事、等を明らかにした。更に、200aのターゲットのZEB-1, PTEN, YAP-1, EphA2, b-catenin, E-cadherin の染色スコアを解析した結果、腺癌、Stage I+II群ではEphA2の発現がAKT2増幅群で有意に低かった。かつEphA2スコアとmiR200aは逆相関を示し、AKT2→miR200aの系でEphA2の関与が示唆された。 2. 93症例 (全組織型) で細胞周期制御因子p27と3種ubiquitin ligaseの発現の関連を免疫染色で検索した。Skp2は扁平上皮癌、小細胞癌で、Pirh2, KPCは非小細胞癌で発現が高頻度だった。臨床病理学的に腺癌でKPC発現はT因子、Pirh2はpN, pStageと、扁平上皮癌で細胞質p27はN因子と有意な相関を示した。また、Pirh2は腺癌では予後とも相関し、組織型特異的なp27制御機構と、ligaseの悪性度の規定因子としての有用性が示された。 3. MLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)法のAKT1, AKT2のカスタムプローブを独自に合成し、遺伝子数を定量解析した結果、FISH解析で同定できなかった微細な遺伝子増加を約25%の症例で確認した。しかし、この遺伝子数の増加は遺伝子不安定性とは関連を認めなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. AKT1、AKT2周辺因子としてmiR-200aの肺癌における関与を示したが、その下流因子として多数の候補蛋白質の中からEph2の関与も示した。2017年日本病理学会と英文誌上(Hum. Path. 1996)で報告済みである。 2. MLPA解析ではカスタムプローブのデザインが予想以上の好結果につながり、多数症例においてAKT遺伝子の微細な増加を検出できた。しかし横浜私立医大との共同研究の結果、当初予想した遺伝子不安定性との関連は見いだせなかった。 3. Akt/mTORの増加に伴って変動する遺伝子、蛋白質の解析は、mRNA, miRNAの両方のmicroarray解析が終了し、候補を1蛋白質に絞り込んだ。このmTOR下流蛋白質を専門に解析している東大・消化器外科と共同で、患者血清と培養細胞の両面からのELISA解析を行っている。また、肺癌組織切片での免疫染色を開始した。 培養細胞系での解析を進めるべく全ての組織型の現有肺癌細胞株を培養, かつATCCから購入予定である。それら多種細胞でm市販のTOR阻害剤を用いた解析を計画している。 4. p27とそのubiquitin ligaseの発現の関連に関しては2016年日本病理学会発表し、論文報告も終了した(Hum. Path. In press)。培養細胞系での解析を開始した。 以上、共同研究者(秋田大学・浜松医大)、研究協力者(金沢大)との連携、当施設の坪地による試料収集と臨床病理学的解析も順調で、研究グループの協力で順調に進行した。
|
今後の研究の推進方策 |
1. AKT1、AKT2関連miR(miR-200a)のターゲットとしてのEphA2について、培養細胞でAKT2を高発現、ノックアウトし、validationを行う。また他のmiRを共同研究者(秋田大学・後藤)と解析中である。 2. mRNA arrayで抽出したAkt/mTORに伴って変動する蛋白質の解析は、その候補蛋白を専門に解析している東大・消化器外科と共同で、患者血清と培養細胞の両面からのELISA解析と組織切片上での免疫染色を平行して継続する。また、mTORとの関連性を確認するために培養細胞にrapamycin誘導体を投与し(市販のeverolimusを購入)動態変化をvalidationする。この際のwesternの系はmTORでは確立済みである(Cancer, 2009年)。また、promoterをluciferase vector (pGL4.10)に人工合成で組み込み,コントロールのpGL4.54 vectorと比較して luciferaseの発現がrapamycinで抑制されることを確認する。 3. p27とubiquitin ligaseの解析は, 培養細胞でPirh2を高発現、ノックアウトし、形質変化を検索する実験を浜松医科大学・北川と計画中である。ligaseの遺伝子変化もMLPA法で金沢大学、浜松医大と共同で解析するため、AKTのMLPAに成功したプロトコールでカスタムプローブをデザイン中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
1. 培養細胞での基礎実験の予備実験に使用したい。 2. 投稿論文が最近採択されたので、論文関連諸経費の支払いも2017年度となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
1. 上記の培養細胞での基礎実験に繰越金を使用する。 2. 上記の採択論文に関わる掲載料(カラー写真費用も含む)、別刷経費を支出する。
|