研究課題/領域番号 |
26460439
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
渡邉 真理子 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (90270701)
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研究分担者 |
堀江 良一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80229228)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホジキンリンパ腫 / EB ウイルス / CD0 |
研究実績の概要 |
Epstein-Barr virus (EBV) 産生細胞株 B95.8 細胞の培養上清を用いて正常末梢血 B リンパ球に EBV を感染させ、シクロスポリンによる免疫抑制下において Lymphoblstoid cell line (LCL) へとトランスフォームさせた。感染前、20日間、50日間のポイントにおいてEBV 由来分子の LMP-1 とホジキンリンパ腫 (HL) の分子基盤である CD30、CD40、JunB の誘導と NF-κB、ERK1/2MAPK の活性化を検討した。EBV 感染後 LMP-1 に加えて JunB の誘導と NF-κB の活性化を認めた。CD40 は NF-κB による誘導が報告されているが、EBV 感染前から B リンパ球に誘導されている一方、CD30 の新たな誘導を認め、ERK1/2MAPK の活性化に伴う JunB によるものと考えられた。LMP-1 は CD30 および CD4O のプロモーターを活性化する事が示され、それぞれ NF-κB と JunB を介したものであると考えられた。 B 細胞の分化に関わる転写因子 E2A は HL において抑制因子である ABF-1 や Id2 の過剰な誘導により抑制されていることが報告されている。LCL 細胞を用いて ABF-1 や Id2 の誘導をウエスタン法により検討したところ、LCL 細胞ではこれらの分子の発現誘導を認めたが、HL における誘導はむしろ減弱しており、EBV 感染が初期の脱分化に寄与する一方、HL においてはむしろ他のメカニズムにより置き換えられている可能性が示唆された。 ヒト化マウスの尾静脈より蛍光標識した LCL を移植し、ホジキンリンパ腫発症機構の解析のためのモデルマウス作製の検討を行った。さらに、移植した LCL の体内分布をイメージアナライザーで解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ホジキンリンパ腫 (HL) の半数に EBV 感染を認め、HL と EBV 感染症とは密接な関係にあることが報告されている。ヒト化マウスに宿主由来のラベルされた Lymphoblastoid cell line (LCL) を戻すことによりその分布や増殖状態を観察できる系をもとに HL 発症についてニッチ形成も含めて解析を目指した。ヒト臍帯血から分離した造血幹細胞を生まれたばかりの NOD/scid/γc-/-(NOG)マウスに注射することによりマウスの免疫系の全てがヒト免疫細胞で構成されるようになったヒト化マウスの作製に成功した。作製したヒト化マウスから B 細胞を分離してシクロスポリンによる免疫抑制下において EBV を感染させトランスフオーム後 LCL を作製し、これにレンチウイルスベクターを用いて蛍光蛋白質を発現させた。蛍光蛋白質を発現した細胞はフローサイトメトリーにて分離し、ヒト化マウス尾静脈からこの蛍光ラベルした LCL を注射して、その分布を経時的に蛍光検出機を用いてスキャンして観察した。このステップにおいて実施した蛍光ラベルした LCL のマウス体内での分布の検出において問題が生じ実験計画の遂行に遅延が生じている。マウスが摂取している餌の蛍光が相対的に非常に強く、LCL の詳細な体内分布の解析が困難であった。このため、実験条件の詳細な検討を行い、条件を変えて再度実験を行うことが必要となってしまった。餌の蛍光は通常の観察では問題にならないが、微量の蛍光を検出する今回の系においては LCL 細胞の分布の検出において大きな支障となる事が明らかとなった。バックグラウンドの蛍光が非常に強く、LCL の詳細な体内分布の解析が困難であった。このため実験条件の詳細な検討を行い、条件を変えて再度実験を行うことが必要となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光ラベルしたヒト化マウス由来 Lymphoblastoid cell line (LCL) をヒト化マウス尾静脈から注射して、その分布を経時的に蛍光検出機を用いてスキャンして観察するステップにおいて、 マウス体内での LCL の分布の蛍光による検出の問題について原因を明らかにする事により解決を行う。マウスが摂取している餌の蛍光が相対的に非常に強く、LCL の詳細な体内分布の解析が困難となった点については、蛍光がさらに弱い餌に変更して予備実験を行ったところ、バックグラウンドの蛍光は軽減され良好な結果を得ている。さらに、レンチウイルスベクターを用いて蛍光蛋白質を発現させる系で使用した蛍光の検出領域が、マウスの餌による蛍光と離れているものを選び分離能を高める。一方、ヒト化マウス尾静脈から注射した LCL の分布を蛍光によらずに検出する系の確立に努める。すなわちマウス各臓器において EBV のウイルス量を定量的に polymerase chain reaction (PCR) 法により測定する系の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
蛍光ラベルしたヒト化マウス由来 Lymphoblastoid cell line (LCL) をヒト化マウス尾静脈から注射して、その分布を経時的に蛍光検出機を用いスキャンして観察するステップにおいて、蛍光検出時の問題点が生じてしまった。マウスが摂取している餌の蛍光が相対的に非常に強く、LCL の詳細な体内分布の解析が困難となった。その原因を究明し、解決策を検討するのに時間を費やし、進展状況にかなり遅れが出て、一部の実験を繰り越してしまい研究期間延長とともに、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
レンチウイルスベクターを用いて蛍光蛋白質を発現させる系で使用する蛍光の検出領域がマウスの餌による蛍光と離れているものを選び蛍光標識された LCL 検出の分解能を高める。一方、ヒト化マウス尾静脈から注射した LCL の分布を蛍光によらずに検出する系、すなわちマウス各臓器において EBV のウイルス量を定量的に PCR 法により測定する系の開発も行う。そのための物品費、細胞培養のための血清などを購入、さらに論文投稿関連費用にあてる予定である。
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