免疫抑制下のEpstein-Barr virus (EBV) 増殖性疾患およびHodgkinリンパ腫(HL)の診断に用いられた標本切片を用いて、正常B細胞がリンパ芽球様細胞株(LCL)へトランスフォームする過程で誘導される事を確認したLMP-1、JunB、CD30の発現を免疫染色法により検討した。HLにおいてはJunB、CD30の発現を、EBV増殖性疾患においてはLMP-1、JunB、CD30の発現を認めた。EBVはEBV増殖性疾患の全てにおいてEBERを検出するin situ ハイブリダイゼーションにて検出した。 ベラパミルに対するヘキスト染色性をフローサイトメトリー(FCM)により解析することでside population(SP)という分画に癌幹細胞分画が濃縮されることが報告され、癌幹細胞集団の同定の一つの方法として広く用いられている。LCLについてFCMによりソーティングし、ギムザ染色を行いSPとnon-SPの細胞の形態を解析したところ、SPはnon-SPに比べて小型の細胞により構成されている事が示された。 B細胞の分化に関わる転写因子E2AはHLにおいて抑制因子であるABF-1の過剰な誘導により抑制されていることが報告されている。ABF-1の誘導をLCL、HL細胞株において遺伝子及びタンパクレベルで解析したところ既に誘導されている事が示された。 以上の事は、正常B細胞がLCLとなる過程でEBV感染に伴うLMP-1誘導がJunBを介してCD30を誘導すると考えられた現象が、確かに臨床検体の検討においても示唆されること、LCL形成の過程で既にB細胞としての分化の抑制と腫瘍化への脱制御が進行している事が示唆された。 一方、ヒト化マウス尾静脈から蛍光ラベルしたLCLを注射して、その分布を経時的に蛍光検出機を用いて観察したが、非特異的な蛍光が詳細な解析を困難なものとした。
|