研究課題/領域番号 |
26460440
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
堀江 良一 北里大学, 医学部, 准教授 (80229228)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | Hodgkin リンパ腫 / CD30 / HSP90 |
研究実績の概要 |
Hodgkin リンパ腫(HL)においてはNF-κB, ERK, AKT, JAK-STATを代表とするシグナル伝達系の恒常的な活性化が報告されているが、いずれも個別の細胞膜から核への縦の方向の議論が中心であり、各シグナル伝達経路間のクロストークについては明らかではない。本研究はCD30シグナルによるHSP90誘導を一つの軸として各シグナル伝達経路間のクロストークを明らかにするものである。 今年度はHSP90のプロモーター領域の単離を行い、HSP90プロモーター活性誘導に重要な領域を特定、その領域に結合しうる転写因子を解析、同定した。HSP90のプロモーターのdeletion mutantはあらかじめ解析しておいた既存の転写因子のマップを参考として作成しておき、可能性の高い既知の転写因子の同定を第一目標とした。HL細胞株等を用いた解析によりHSRE(heat shock responsive element)をHSP90プロモーターに見いだし、heat shock factor 1(HSF1)によりHSP90が誘導されている事が示唆された。 さらにCD30シグナルがHSF1をリン酸化することをCD30の過剰発現系およびHL細胞株におけるCD30ノックダウンの系を使用して明らかにした。HSF-1はCD30のシグナルによらず核内に存在して、CD30シグナルによりリン酸化を受けることが示唆された。このことはHSF-1がCD30シグナルとは別の経路によって誘導されている事が示唆される。HLの臨床検体と正常扁桃をコントロールとして用いた検討では、HL細胞においてHSP90、HSF-1、リン酸化HSF-1が強く発現していることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期待した結果を得る事が出来ているから。
|
今後の研究の推進方策 |
CD30シグナルによるHSF1のリン酸化を介したHSP90誘導機構に関与するCD30シグナル伝達経路について明らかにする事を目的にする。CD30を過剰発現して恒常的にHSP90の発現を認めるFLCD30細胞を使用して、これまでCD30の直接の下流にあることが報告されているNF-κB、ERK1/2、p38MAPKに加えTRAFの下流にあると報告されているJNK経路の阻害剤を用いて、HSP90の発現に対する効果をウエスタン法を用いて検討する。 一方、HLと同じくCD30を過剰発現する未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)におけるCD30-HSF-1-HSP90経路の意義について検討する。ALCLにはNPM-ALK陽性のものと陰性のものがある。NPM-ALK陽性ALCL細胞株においてALK阻害剤によるNF-κB, ERK, AKT, JAK-STAT経路の変化を検討する。さらに細胞株および臨床検体を用いてHSP90、HSF-1、リン酸化HSF-1の発現を検討する。さらにNPM-ALKによるHSP90誘導の可能性について検討するためにBA/F3細胞に恒常的にNPM-ALKを発現するトランスフォーマントをベクターのものコントロール細胞とともに作製して、HSP90、HSF-1、リン酸化HSF-1の発現を検討する。NPM-ALK陽性ALCL細胞株においてALK阻害剤を用いてHSP90、HSF-1、リン酸化HSF-1の発現の変化について検討する。さらにNPM-ALK陽性ALCL細胞株とNPM-ALK陰性ALCL細胞株においてCD30をsiRNAを用いてノックダウンしてHSP90、HSF-1、リン酸化HSF-1の発現の変化について検討する。以上の結果をふまえてHL、NPM-ALK陽性ALCLとNPM-ALK陰性ALCLにおけるCD30を介したHSP90経路の役割について比較検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進捗しているが、一部の実験が次年度に繰り越されたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験に使用する物品費に使用する予定である。
|