古典的Hodgkinリンパ腫(cHL)細胞では複数のシグナル伝達経路の恒常的活性化を認め、病態への関与が報告されている。しかしながら、これらのシグナル伝達経路の統括的制御機構は明らかではない。本研究ではCD30によるheat shock protein (HSP)90の誘導機構の解析を通して、cHL細胞で恒常的に活性化、病態と関わるシグナル伝達経路との横断的関係を検討した。FL細胞でのCD30過剰発現、cHLおよび未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)細胞株でCD30をノックダウン、さらにHSP90阻害剤を用いて病態と関わるとされる下流のシグナルの変化を検討した。さらにレポータージーンアッセイ法などを用いてCD30によるHSP90誘導機構を解析した。FL細胞ではCD30過剰発現によりHSP90の誘導に加えてNF-κB、ERK/MAPK、AKT、JAK-STAT経路の活性化を認めた。一方、cHL細胞株でCD30をノックダウンするとHSP90は抑制、上記経路の抑制を認めた。HSP90阻害剤でも同様の効果を認めた。cHL細胞株でCD30のノックダウンにより、HSP90の誘導に関わるHeat shock factor (HSF)-1の活性低下を認めた。FL細胞にCD30を過剰発現するとJNK-HSF-1活性化を介してHSP90のプロモーター活性の上昇を誘導した。CD30はHSP90の誘導を通して、cHL細胞において恒常的に活性化し病態と関わるとされるNF-κB、MAPK/ERK、AKT、JAK-STAT経路のシグナルの活性化を増強して横断的に統合する機能を果たし、cHL細胞の病態に関与していることが示唆された。一方、cHL細胞におけるCD30の機能はNPM-ALK陽性ALCLではALKによりにより代替されていることを示唆する結果を得た。
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