研究実績の概要 |
申請者は世界で初めて微乳頭構造を有する肺腺癌(micropapillary pattern adenocarcinoma of the lung)細胞株を樹立しKU-MPPAC細胞と命名した。この細胞株を用いてMPPACを規定するバイオマーカーの探索を行うことを研究の目的としている。今年度は作製したMPPAC細胞を用いた癌iPS細胞の作製を行った。方法は、KU-MPPAC細胞に山中4因子(KLF-3, c-MYC, OCT3/4, SOX2)の導入されたそれぞれのウイルスベクターが混合されている溶液を加え培養する方法で癌幹細胞の樹立を行った。樹立した細胞をH-SFM培地とコラーゲンIVコーティングディッシュで培養すると接着細胞として、EB培地とLow-attachment 24-well plateで培養するとEB様細胞塊の形態を取る。作製した細胞はKU-MPPAC4Fとした。この細胞は免疫ブロット法で導入した4つの因子の発現があることを確認している。樹立した細胞をSCIDマウスに移植したところ、親株であるKU-MPPAC細胞と同様の形態を示していたが、免疫染色の結果iPS細胞の特徴であるSOX2, OCT3/4, KLF4, c-MYCの発現が亢進していた。その他、Nestin, ABCG2, PDPN, CD47ALDH1A1, TROYなど幹細胞のマーカーとして報告されている分子の発現亢進も確認した。さらに、KU-MPPAC染色体解析を行い、1番2番10番22番染色体のトリソミーや様々な染色体異常があり、モダル数として48本であることが分かった。肺腺癌細胞株であるA549とKU-MPPAC細胞でのmRNA発現のプロファイルを行い、KU-MPPAC細胞は神経内分泌細胞由来の分子の発現が上昇していることを確認した。
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