研究課題/領域番号 |
26460444
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
辻村 亨 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20227408)
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研究分担者 |
鳥井 郁子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70207661) [辞退]
佐藤 鮎子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20419823)
篠原 義康 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60723509)
工藤 朝雄 兵庫医科大学, 医学部, ポストドクター (60709781) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 悪性中皮腫 / エピジェネティクス / EZH2 / 細胞増殖 |
研究実績の概要 |
EZH2(ヒストンH3メチル化酵素)は、エピジェネティクス機構の中心的な役割を果たすポリコーム群タンパク質複合体の構成分子である。昨年度は、EZH2高発現中皮腫細胞(親中皮腫細胞)にEZH2 siRNAを導入してEZH2発現が抑制された中皮腫細胞(EZH2発現抑制中皮腫細胞)を樹立した。また、不死化中皮細胞にEZH2 cDNAを導入してEZH2を高発現する中皮細胞(EZH2高発現中皮細胞)も樹立した。本年度は、悪性中皮腫に高発現するEZH2の生物学的作用を明らかにすることを目的にして、これらのEZH2発現抑制中皮腫細胞およびEZH2高発現中皮細胞を用いて、以下の実験を行った。EZH2高発現中皮腫細胞(親中皮腫細胞)およびEZH2発現抑制中皮腫細胞を免疫不全マウスに移植すると、EZH2発現抑制中皮腫細胞では、EZH2高発現中皮腫細胞(親中皮腫細胞)に比べて、造腫瘍能は低下していた。一方、EZH2高発現中皮細胞を免疫不全マウスに移植しても造腫瘍能を示さなかった。また、EZH2阻害剤処理により、種々の中皮腫細胞の細胞増殖や細胞運動能が抑制された。更に、EZH2高発現中皮腫細胞(親中皮腫細胞)とEZH2発現抑制中皮腫細胞の遺伝子発現プロファイルを比較すると、親中皮腫細胞において発現が高い遺伝子或いは発現が低い遺伝子が見出され、この中には血管新生因子をコードする遺伝子やがん抑制遺伝子が含まれていた。中皮細胞にEZH2を過剰発現させても造腫瘍能を獲得するには至らないが、悪性中皮腫の増殖や浸潤にEZH2を中心としたエピジェネティクス機構が深く関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に樹立したEZH2発現抑制中皮腫細胞およびEZH2高発現中皮細胞を用いて、in vivoにおけるEZH2の生物学的作用を解析して、EZH2を中心としたエピジェネティクス機構が、悪性中皮腫の増殖や浸潤に深く関与することを示した。また、EZH2の標的候補遺伝子を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
EZH2の標的候補遺伝子について、siRNAを用いて発現を抑制した中皮腫細胞を作製して生物学的機能を解析する。また、最近、BAP1の下流にEZH2が位置することが報告されたので(Nat Med. 2015, 21:1344-1349)、BAP1変異とEZH2機能との関係について検討を加える。
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