研究課題
まず、血管肉腫症例および血管肉腫細胞株(MO-LAS)を用いて、sphingosine-1-phosphate(S1P)レセプターである、S1PR1、S1PR2、S1PR4、S1PR5の免疫組織化学的発現について市販のモノクローナル抗体を用いて検討した。しかしながら、いずれも特異的な染色性が得られず、sphingosine-1-phosphateレセプターの発現を免疫組織化学的に検討するには、ポリクローナル抗体である抗S1PR1ウサギ抗体(H-60, Santa Cruz社)のみが、特異性を確認できたものとして、使用可能であることが判明した。次に、皮膚の血管肉腫症例(13例)における、S1PR1とSTAT3の活性化の関係について、H-60 抗体と抗phospho STAT3 (Try705)抗体を用いた免疫組織化学にて検討した。その結果、すべての血管肉腫症例において、S1PR1の高発現とSTAT3の活性化との関連性が明らかとなった。特に血管構造を示さない異型の強い細胞の核にphospho STAT3 (Try705)の強い染色性がみられた。また、S1Pの生成に関与するsphingosine kinase 1 (SPHK-1)についても、全例が細胞質に強陽性となった。さらに、S1P/S1PR1シグナルによる発現の増強が報告されている細胞接着因子であるvascular cell adhesion molecule (VCAM)-1の発現についても13例の血管肉腫症例について検討したが、その発現は不均一であり、S1PR1の発現との相関は得られなかった。以上の結果とこれまでの結果を合わせると、血管肉腫では、SPHK-1/S1P/S1PR1/STAT3のオートクラインループによる恒常的な細胞運動の亢進が血管肉腫の強い転移能と関連していることが示唆された。
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Kawasaki Medical Journal
巻: 42 ページ: 31-45
10.11482/KMJ-E42 (2) 31
http://www.kawasaki-m.ac.jp/pathology/