研究課題
本研究は、インフルエンザの重症化に関与する因子を明らかにすることを目的とする。2009年にパンデミックとなったA/H1N1pdm09亜型インフルエンザは季節性インフルエンザとなっても重症化例が多い。2009年から2015年シーズンまでに集積されたA/H1N1pdm09亜型インフルエンザ院外死亡34例(平均46歳、男性23名、女性11名)は平均3.5病日で死亡していた。宿主因子を示唆する基礎疾患は精神神経疾患14名、肥満(BMI30以上)13名、高血圧7名、気管支喘息5名、糖尿病4名であった。病理所見では13例にび漫性肺胞傷害がみられ、細菌性気管支肺炎は5例、脳症、心筋障害がそれぞれ3例ずつみられた。これまで免疫組織化学で季節性インフレンザウイルス抗原が肺胞上皮細胞に検出されたことはなかったが、A/H1N1pdm09感染死亡例では、わずかであるが検出された。パラフィン切片から回収したインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)の変異はなく、重症化の要因としてHA領域以外のウイルス因子あるいは宿主因子の可能性があると考えられた。2009年国内初のA/H1N1pdm09感染剖検例では肺胞領域から主に鳥型レセプターに親和性の高いクローンが回収されたが、電子顕微鏡像として、I型、II型肺胞上皮細胞からのウイルスの出芽像、単球のウイルス貪食像、血管内皮細胞の形態変化や間質への好中球の浸潤が観察された。インフルエンザ脳症は型、亜型にかかわらず発症し、発症には主に宿主因子が関与していると考えられる。脳浮腫像以外にみられることのあるアストロサイトの突起崩壊像(clasmatodendrosis)とオートファジーの関連を脳症例において免疫組織化学で確認した。オートファジー関連タンパクがGFAP陽性アストログリアに検出されたが、量的評価が難しく、現段階では病態との関連は不明である。
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