研究課題/領域番号 |
26460449
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
城 謙輔 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10057086)
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研究分担者 |
中村 保宏 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80396499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | IgA腎症 / 扁桃炎 / 扁桃摘出術 / ステロイドパルス療法 / 腎生検 / 樹状細胞 / 治療効果 / 寛解予後 |
研究実績の概要 |
1. IgA腎症の扁桃炎と腎糸球体病変との連関に関する分子病理学的研究 原発性IgA腎症患者の口蓋扁桃は、T細胞領域の拡大、樹状細胞結節の増多、陰窩上皮の網状化阻害の3つの特徴的な形態変化を呈することを昨年の成果で報告した。本年度は移植後の比較的進行したIgA腎症患者19例の扁桃を分子病理学的に解析した。その結果、上記の3つの特徴が一層顕著となり、担IgA形質細胞の担IgG形質細胞に対する比率が増強された。さらに、移植後IgA腎症患者の再発後に摘出された扁桃組織は、再発していない患者の扁桃と比較して陰窩上皮網状化の阻害度が有意に強く、外的刺激反応の低下がIgA腎症の再発に影響したと解釈された。一方、T細胞結節数は移植後の免疫抑制剤使用下において、腎炎再発の有無に関連性はなかった。 2. 腎生検によるIgA腎症扁摘パルス療法の治療効果の予測に関する研究 扁摘パルス療法1年後に血尿寛解に至ったJCHO仙台病院147症例の中で、治療1年後の蛋白尿非寛解を規定する臨床病理学的因子を多変量解析により抽出し、それらの因子から蛋白尿非寛解にいたる予測式を昨年報告した。本年度は、他施設(東京都保健医療公社大久保病院)の43症例を用い、昨年の予測式の実用性について検討した。一日蛋白尿0.43g、間質線維化25%の分岐点を用いた予測式による実測値では、60%の予測性が50%に低下した。一日蛋白尿の分岐点を0.64gに挙げると60%の予測性が維持された。上記の一日蛋白尿と間質線維化が治療1年後の蛋白尿非寛解を規定する臨床病理学的因子であったが、一日蛋白尿の分岐点の設定に施設間にズレが生じた。その原因の解明とさらなるコホートの追加が望まれる。 (全角文字は2バイト、半角文字は1バイトと換算)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
a. IgA腎症の扁桃炎と腎糸球体病変との連関に関する分子病理学的研究 申請者が旧仙台社会保険病院(現JCHO仙台病院)から東北大学に移動したことに伴い、JCHO仙台病院での資料を利用しての研究が難しくなった。そこで、東北大学を多施設共同研究の総括施設、東京都保健医療公社大久保病院と三重大学を分担施設として倫理委員会を申請した。その承認書をもとに、各施設にてすでに倫理委員会に申請している。 東京都保健医療公社大久保病院では、倫理委員会の承認があり、その研究資料を使用して今回の臨床病理的研究の成果を出すことができた。しかし、扁桃で産生される分子(免疫グロブリン, サイトカイン、TLR)や感作リンパ球が、血流を介して腎臓に到達して炎症を惹起することを想定した分子病理的研究が、材料の不足から滞っている。現在、三重大での倫理委員会の承認を待っている段階。
b. 腎生検によるIgA腎症扁摘パルス療法の治療効果の予測に関する研究 本年度は、他施設でまとまったコホートを有する東京都保健医療公社大久保病院の症例を追加することができ、治療効果の予測性を施設間で比較することが出来た。全国的な基準づくりに重要なステップと思う。達成度は比較的順調である。
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今後の研究の推進方策 |
a. IgA腎症の扁桃炎と腎糸球体病変との連関に関する分子病理学的研究 扁桃に由来し、糸球体病変を惹起する諸因子の分子発現を、これまでの酵素抗体法によるデータを参考に、分子生物学的手法を用いてIgA腎症患者の扁桃を検討する。凍結したIgA腎症患者の扁桃はすでに東北大の共利研に移動してあり、扁桃中の炎症性サイトカイン(IL6)、ケモカイン産生リンパ球(Th17)、regulator T 細胞を定量RT-PCR法により解析して、糸球体病変を惹起する細胞性免疫の諸因子を追跡する予定。また、三重大学でのIgA腎症患者の扁桃が分子病理的に解析できる予定。
b. 腎生検によるIgA腎症扁摘パルス療法の治療効果の予測に関する研究 東京都保健医療公社大久保病院の症例と同様に、三重大学のこれまでの扁摘パルス療法の症例を加え、より大きなコホートで解析する予定。また、治療1年後の蛋白尿非寛解を規定する臨床病理学的因子における一日蛋白尿の分岐点の多施設間のズレがどの様な意味をもつかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の399,694円を来年度にまわした。理由は、JCHO仙台病院から東北大学への研究施設の移動に伴い、JCHO仙台病院からの研究材料の入手が困難となり、研究材料の不足が生じ、本年度の分子病理的研究が滞った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の分子病理学的研究に今年度からの補足分を用いる。次年度には、倫理委員会の承認とともに三重大学との共同研究が成立しており、再び研究材料の入手が見込まれる。次年度に経常予算が少ないため、それを今年度から補充し、次年度の分子病理的研究にあてる予定。
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