研究課題
京都大学附属病院で保存されている肝移植後肝組織のうち、免疫寛容に至った例と慢性拒絶反応例を対象に、グラフト生検あるいは摘出肝から蛋白質を抽出、抗体アレイや質量分析などの網羅的解析を実施した。慢性拒絶反応により再移植例を用いて、抗体アレイによる網羅的解析を行った。正常肝に比較して、慢性拒絶反応で発現低下がみられた蛋白質 STK17A (serine/threonine kinase 17A) を選択し、組織切片上での発現細胞および分布の検証を行った。STK17A は the death-associated protein kinase (DAPK) family に属するキナーゼだが、肝臓における分布や機能は不明である。我々は、HepG2 細胞やヒト肝検体を用いて検証した結果、STK17A は毛細胆管に発現する蛋白質で、アクチンと共存するキナーゼであった。毛細胆管に存在するよく知られた BSEP と分布、アミノ酸配列も類似することが分かった。また、肝移植後、経時的に生検された患者の生検において、慢性拒絶反応として組織学的診断確定に至る前に、蛋白発現が減少、分布の異常がみられた。慢性拒絶反応の早期診断に有用である可能性を考察した。免疫寛容群と正常肝を比較検討した質量分析による解析では、両群で有意な差がある候補タンパク質が得られなかった。引き続き肝移植後の免疫寛容のバイオマーカーとなり得る候補蛋白質を検討していく予定である。
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Transplantation
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10.1097/TP.0000000000001653
Pathol Int
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