研究実績の概要 |
胸膜肉腫型中皮腫sarcomatoid mesotheliomaと肺多形癌lung pleomorphic carcinomaは形態学的な類似点が多く、臨床・病理学的鑑別の困難な症例が少なからず存在し、現在まで両者の鑑別は病変の局在が最も重要とされる。以前我々はこれら疾患の鑑別に最も有用なマーカーはD2-40であることを報告したが、それ以降、新たな新規鑑別マーカーの報告は殆どなかった。 前年度までに網羅的遺伝子発現解析で肺多形癌により高い発現を示すマーカーとして同定されたMUC4を同定し、これに対する抗MUC4抗体(市販)を用いて肉腫型中皮腫31例、肺多形癌29例に対して免疫組織学的染色を行った。その結果、MUC4の発現は肉腫型中皮腫では皆無0%であるのに対して、肺多形癌では72.4%となり、MUC4が肉腫型中皮腫のよい陰性マーカーであることを明らかにした。 今年度は他のマーカーのp40, TTF-1, Claudin-4, p63, CK5/6, Calretinin, D2-40, WT-1の染色も加えて、これらマーカーとの組み合わせによる正診率を検討した。その結果、陰性マーカーとしてのMUC4を含めた場合、正診率は最も高くなり、MUC4の胸膜肉腫型中皮腫と肺多形癌の鑑別診断における陰性マーカーとしての重要性を明らかにすることが出来た。 今後、MUC4以外にも両者の発現に差のあったいくつかの遺伝子を抽出して、免疫組織化学的染色への応用をはかるとともに、MUC4の上皮型中皮腫、二相型中皮腫の病理学的診断における有用性についても検討する予定である。
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