研究課題/領域番号 |
26460453
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
長谷川 功紀 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (50525798)
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研究分担者 |
伊藤 隆明 熊本大学, その他の研究科, 教授 (70168392)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CXCR4 / Kisspeptin / 肺小細胞癌 / 甲状腺髄様癌 / Ga-67 / SPECT/CT / 染色剤 |
研究実績の概要 |
転移能の評価を行う目的で標的分子をCXCR4とKiSS1受容体に焦点を絞り研究を行ってきた。昨年度、KiSS1受容体発現を評価するためにそのリガンドであるKisspeptinを誘導体化し染色剤とした。Western ligand blotにより腫瘍細胞での発現をスクリーニングした結果、肺小細胞癌(H69細胞)、甲状腺髄様癌(TT細胞)などでKiSS1受容体発現を確認することができた。また肺小細胞癌、甲状腺髄様癌の病理検体を4症例ずつ集め、そのパラフィン包埋切片を用いて染色した結果、すべてにおいてKisspeptin染色剤で腫瘍細胞が検出できる事を明らかにした。よって染色剤が病理検体に対し有効に染色できること、および実際にヒト疾患組織において発現があることを確認した。本年度はKisspeptinをGa-67標識しSPECT用プローブとする研究を進めた。H69細胞を高度免疫不全マウスに移植しその腫瘍へのプローブ集積をイメージングした結果、腫瘍組織中の受容体発現部位へプローブが集積することをSPECTにより明らかにした。ただ肺小細胞癌は腫瘍組織に壊死を伴いやすく、プローブの集積を定量的に評価することが難しいことが判った。そこで腫瘍をTT細胞に変更し、高度免疫不全マウスに移植し、プローブの腫瘍集積性を評価した。Ga-67標識Kisspeptinを投与した結果、腫瘍にほぼ均一にプローブが集積した。また他臓器への集積を評価した結果、肝臓に非特異的集積が高いことが判った。以上の結果をまとめて現在、Kisspeptinを用いた腫瘍イメージング薬剤開発として論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
標的分子をCXCR4とKiSS1受容体に焦点を絞り研究を行ってきた。KisspeptinのSPECTプローブ開発において肺小細胞癌ではその腫瘍塊の中に壊死組織を伴い、SPECTを用いて薬剤集積を評価するのに困難を伴った。そこで研究途中で標的腫瘍を変更し、甲状腺髄様癌細胞を評価に用いることにした。この変更により腫瘍移植マウスの作製に半年間を要したため研究に遅れが生じた。また本年度、研究代表者が所属先を異動したことにより新しく研究環境を立ち上げる必要があったため研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
CXCR4のリガンドは途中まで合成が完了している。今後、これを染色剤化し再びWestern ligand blotにより各種腫瘍細胞でCXCR4発現スクリーニングする。また病理組織を用いて実際のヒト組織における発現を評価する予定である。またSPECTプローブとして調製を行い腫瘍移植動物により全身動態を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度末に染色薬剤を合成していたが、用いる蛍光色素によっては副反応が起こり、蛍光が消失することが判った。よって購入しようとしていた蛍光色素を検討しなければならなくなり、その分の試薬代が翌年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であるためCXCR4検出用染色薬剤の完成を目指す。そのために蛍光色素を反応させて目的物を得る。また病理標本を用いて染色性を検討する。またGa-67により標識してSPECTプローブとして調製し、腫瘍移植マウスによりSPECT画像を取得することを目的とする。ただしSPECT画像を取得するための共同研究先である熊本大学が震災の影響で実験施設の稼働状況が現段階でまだ明確ではないので、状況に合わせて柔軟に対応する。
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