研究課題
本研究は、悪性黒色腫・子宮体癌・膵臓癌・乳癌の所属リンパ節マクロファージと抗腫瘍免疫との相関を、特にCD169に着目して解析し、この分子が予後マーカーとしての有用性を明らかにすることが目的である。この方針に従い、以下の解析を行った。まずはヒトリンパ節においてCD169陽性マクロファージの分布を免疫組織学的に解析したあところ、洞マクロファージの数は概ね一定であるのに対し、CD169陽性率は症例毎にかなり変動があることが明らかとなった。私達はCD169がヒトの炎症性(M1-like)マクロファージのマーカーとして有用であることを報告している(Ohnishi et al. Cancer Sci 2013)。そのため、CD169陽性マクロファージが特にT細胞やNK細胞を介した抗腫瘍免疫を賦活化していると予想し、リンパ球との相関を解析した。リンパ節においてCD169陽性マクロファージはCD8陽性Tリンパ球やCD57陽性NK細胞と直接接触しており、さらに腫瘍組織内へのT細胞やNK細胞の浸潤と正の相関を示した。次に所属リンパ節のCD169陽性マクロファージと悪性黒色腫・子宮体癌・乳癌症例の臨床予後との相関を解析した。悪性黒色腫と子宮体癌では、CD169陽性マクロファージが多い症例では少ない症例と比較して全生存率が有意に良好であった。さらに多変量解析を行った結果、悪性黒色腫においてCD169陽性率は独立した予後因子となることを明らかにした。対して、乳癌ではCD169陽性マクロファージと生存率に相関性を認めなかった。膵臓癌については、現在解析中である。即ち、悪性黒色腫と子宮体癌においては、リンパ節マクロファージにおけるCD169に発現はT細胞やNK細胞を介した抗腫瘍免疫や臨床予後を反映するマーカー分子として有用であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体を用いた臨床病理学的解析は、あと膵臓癌を残すのみで、ほぼ終了した。ヒトマクロファージを用いた培養実験も併せて進めており、本研究は年次計画の予定通りに進展している。
今後の研究はヒトマクロファージを用いた培養実験が主体となる。また、CD169陽性マクロファージを反映する血清分子マーカーを同定することも重要な目標であり、外科学講座の協力を得て、研究を進める準備を行っている。
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