研究課題
本研究は、悪性黒色腫・子宮体癌・膵臓癌・乳癌の所属リンパ節マクロファージと抗腫瘍免疫との相関を、特にCD169に着目して解析し、臨床予後を反映する分子マーカーとしての有用性を明らかにすることが目的である。前年度での解析では、リンパ節のCD169陽性マクロファージは抗腫瘍免疫に主体的に関わるCD8陽性T細胞やCD57陽性NK細胞と直接接触しており、さらに腫瘍組織内へのT細胞やNK細胞の浸潤と正の相関を示すことを明らかにし、さらに悪性黒色腫と子宮体癌では、所属リンパ節のCD169陽性マクロファージが多いほど、予後良好であることを明らかにした。今年度は、膵臓癌と乳癌を対象に同様の解析を行った。その結果、膵臓癌においてもリンパ節におけるCD169の発現は、生命予後とT細胞による抗腫瘍免疫を反映する分子マーカーとして有用であることを明らかにした。対して、乳癌ではCD169の発現と生命予後に有意な相関を認めなかったが、リンパ節のCD169陽性マクロファージが多い乳癌症例では、リンパ節転移が有意に少ない傾向がみられた。即ち、悪性黒色腫・子宮体癌・膵臓癌では、リンパ節マクロファージにおけるCD169の発現は、T細胞やNK細胞を介した抗腫瘍免疫や臨床予後を反映するマーカー分子として有用であると考えられた。今年度では、マクロファージにおけるCD169発現のメカニズムを詳細に解析するため、培養実験を行った。その結果、1型IFN(IFN-alpha, IFN-beta)の刺激により、CD169の発現が特異的および強力に誘導されることが明らかとなった。さらに、がん患者のリンパ節においてもCD169陽性マクロファージの近傍に、IFN-alphaを産生する組織球や形質細胞様樹状細胞が局在することを明らかにした。今後はCD169陽性マクロファージの性質について、詳細に解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体を用いた臨床病理学的解析は予定通り全て終了した。年次計画に従い、ヒトマクロファージを対象とした培養実験をさらに進めて行く予定である。
今後の研究は、ヒトマクロファージを用いた培養実験が主体となる。また、CD169陽性マクロファージの活性化を反映する血清中分子マーカーの同定も重要な目標であり、すでに熊本大学倫理委員会による研究計画承認とサンプルの収集を行っている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
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