研究実績の概要 |
われわれは、正常上皮で細胞極性を制御しているatypical protetein kinase λ/ιが各種癌(乳癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌など)で高発現をし、oncogenicに作用することを示してきた。 本年度は,子宮頸癌の前駆病変であるCervical Intraepithelial neoplasm (CIN) におけるaPKCλ/ιの発現と細胞レベルでの局在を検討した。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)との関係についても検討を行った。対象は192例のCIN、および13例の正常子宮頸部組織を用いた。aPKCλ/ιの過剰発現は正常上皮, 7.7%; CIN1, 41.7%; CIN2/3, 76.4%であった。aPKCλ/ι の核内局在は正常上皮, 0.0%; CIN1, 36.9%; CIN2/3, 78.7%であった。すなわち CIN のグレードは aPKCλ/ι 過剰発現と各局在に正相関していた。 次に 140例の CIN を後方視的に検討し、4年間の累積進行率 をCox ハザードモデルを用いて検討した。aPKCλ/ι過剰発現または各局在を伴った CIN1は、正常発現または細胞質内局在症例よりも進行率が優位に高かった。多変量解析解析で、HPV16, 18感染, aPKCλ/ι 過剰発現および aPKCλ/ι 各局在は独立したCIN1の進行危険因子であることがわかった。以上よりaPKCの過剰発現、核内局在がCIN病変の進行や予後を予測するマーカーとして有益であると示唆された。 今後,本研究では,aPKCの過剰発現が発がん・がんの進展とどのように関連するか,その機序を明らかにすることを目的とし,将来的にCINおよび子宮頸癌に対する分子標的治療の標的となる分子を探索する.現在、他癌についても検討を加えている。
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