研究実績の概要 |
東邦大学大森病院の特発性・二次性を含む肺動脈性肺高血圧症(PAH)病理剖検例と年齢を一致させた肺動脈肥厚の無い対照剖検例の15%ホルマリン固定後パラフィン包埋された肺組織を用いてWnt/PCPパスウェイからRhoA/ROCKパスウェイへの経路に関与する遺伝子であるWnt-11, Dvl-2, Daam-1を標的とした免疫組織染色を行い、発現部位、および発現の程度の量的評価を行った。その結果、Dvl-2,Daam-1は肺動脈の内膜や筋線維芽細胞、中膜平滑筋細胞に陽性を示したのに対してWnt-11では陽性像は認められなかった。内皮細胞と筋線維芽細胞においては特異的な発現様式は認められなかったが、中膜平滑筋細胞ではIPAH例では中膜平滑筋細胞でDvl-2が低発現でもDaam-1の発現がみられ、これは二次性PAH症例や対照例とは相対する結果であった。これらにより、Daam-1の非自律性発現によるRhoA/ROCKパスウェイの発現亢進がIPAH発症に寄与している可能性が示唆された。 これらの研究成果を、研究代表者が19th Congress of the International Society for Human and Animal Mycology (Melbourne, 2016)等において発表を行った。さらに、研究協力者である矢内俊とともに論文化した(Diagnostic Pathology, 2017)。また環境由来の真菌であるStachybotrys chartarumをマウスに経気管的に反復接種して作製したIPAH類似肺動脈病変では上記のいずれの遺伝子に対する免疫組織染色でも陽性像は得られなかったが、ヒトIPAH肺における同菌の遺伝子の検出に使用した手技について触れた数編の発表がある。
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