研究課題/領域番号 |
26460461
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
杉谷 雅彦 日本大学, 医学部, 教授 (40187654)
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研究分担者 |
中野 雅行 横浜市立大学, 大学病院, 特任教授 (00092073)
江角 真理子 日本大学, 医学部, 准教授 (10147019)
小川 眞広 日本大学, 医学部, 講師 (20318405)
山崎 慎太郎 日本大学, 医学部, 助教 (20409014)
絹川 典子 日本大学, 医学部, 講師 (90224998)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝細胞腺腫 / 発生頻度 / WHO分類 / subtype / アンケート調査 |
研究実績の概要 |
本邦における肝腫瘍の大部分は肝細胞癌で、肝細胞腺腫HCAは非常に少なく日本における肝細胞腺腫の発生頻度についてはは未だ報告がなされていない。大学病院81施設、独立行政法人国立病院機構101施設、日本赤十字社の赤十字病院85施設、および、肝切除を比較的多数施行している上記以外の病院127施設、合計394施設の、消化器・肝胆膵外科と病理診断科の部科長宛てに、総数788通のアンケートを送付し、協力をお願いした。回答率は約80%で、アンケート用紙に部分的に未回答の欄が残っている症例に対する問い合わせがいまだ完全でなく、正確な集計にもうしばらく時間を要するが、概ね次のような結果である。 回答施設の平均病床数は約585床。HCAの診断は1986年から2014年までの間になされているが、回答いただいた施設により調査の年数が異なっており、この点に関しては統計的な処理が難しい。HCA確信例、および、確定は難しいがその施設ではHCAと考えた症例の合計は157例、男/女比はおおよそ3/2、年齢は14歳から87歳まで、平均39.3歳。症例の結節数は、1個が76.6%, 2~9個が17.2%, 10個以上が6.2%、糖原病合併症例は約9%、糖尿病合併症例は約7%、肥満合併症例は約10%、高脂血症合併症例は約5%、アルコール歴を有する症例は約6.5%、HBsAg陽性症例は約0.6%であった。157例中、subtypeが決定された症例は約36%、その中では、Inflammatory HCA, 40.9%; HNF1α-inactivated HCA, 38.6%, β-catenin activated HCA, 4.5%; unclassified HCA, 16%であった。 現時点でのアンケートの空欄を追加調査し、精度を高める計画をたてている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
達成度の自己評価としては、おおむね順調に進展している、と考える。 本課題の目的の一つが、未だ報告がない本邦の肝細胞腺腫に関する疫学調査であるが、全国アンケートの回答率が2016年末時点で80%を越えた事は大きな成果で、また昨年国際学会で発表した当研究班および協力者で収集したHCA 37例と全国アンケートによるHCA症例におけるsubtypeの内訳は、数値の細かな差異はあるが、類似した傾向である事が大きな理由で、さらに本研究に関連した論文や学会発表がなされた事、等による。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、次のことを考えている。 1.アンケートの空欄を埋める連絡を協力施設に対して行い、精度を上げる事を目標とする。 2.今回のアンケートや我々が収拾したHCA症例の背景を調べると、欧米に於けるHCAと本邦におけるHCAの背景に差があることが明らかになった。他の成因の可能性についても検討が必要で解析を進める予定である。 3.我々はこれまでに観察できた症例において、門脈域の線維組織の分解・消失が共通して特徴的なことに着目しているが、この事に関する研究はまれで、進めてゆく。 4.近年のHCAに関する論文では、Hepatocyte nuclear factor (HNF)1α遺伝子, β-catenin, gp130等の遺伝子異常とsubtypeに関するあたらしい記述が見られるが、我々もこれまで報告のある遺伝子異常と4つのsubtype、特にunclassified HCAのあいだに関連性がないか検索している。また、HCA発症後にHCCが発生した症例やHCA発見時にHCCも共存している症例が見つかり、腺腫と癌における遺伝子異常の検索を施行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査の返信後の連絡を主にe-mailでやり取りしたために郵送費がかなり節約でき、また標本をやり取りするための宅急便料金は必要であるが、できるだけその回数を少なくする努力をした。DNA抽出等の遺伝子解析の研究を始めたが、以前より保有していた酵素やKitを用いてスタートしたために、次年度に回す事ができるある程度の額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に必要な、抗体(Liver fatty acid binding protein antibody, Glutamine synthetase antibody, β-catenin antibody, Serum Amyloid A antibody, Anti-C Reactive Protein antibody, Heat Schok Protein 70 antibody, Glypican3 antibody)購入費用、遺伝子工学研究のためのDNA抽出Kit (Recover all total nucleic acid isolation), 酵素(Ex Taq HS DNA polymelase), primer等の購入費用として使用予定。
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