研究課題
EGFR(Epidermal growth factor receptor)遺伝子変異解析は、肺癌患者のがん治療において必要不可欠であり、これらは治療選択ための重要な検査の1つとして保険収載の適応となっている。一般にがんの遺伝子変異解析は、がん細胞から直接DNAを抽出するが、提供された検体にがん細胞が含まれていないこともある。本研究は細胞診の液状化検体に着目し,この液状検体中に遊離しているDNAを用いたEGFR遺伝子変異の検出が可能か否か検討を行った.まず初めに,培養細胞PC9(exon 19 mutation)とH1975(exon 21 point mutationとexon20, T790M)を用いて,時間変化におけるがん細胞の死滅/変性と遊離DNAの関係を検証した.時間は採取後から数日後まで幅広く設定し,それぞれの培養液を沈渣と上澄み液に分離した.その結果,培養細胞は放置時間の経過とともに死滅・変性を期待した.その細胞所見は核クロマチンの凝集がみられ,免疫細胞化学においてcleaved caspase-3の発現増加を呈した.上澄み液中のDNA量は時間の経過によって変化し,採取直後と数日後では約1.5倍の違いを認めた.次に,臨床検体を用いた検討を行った.約280例の呼吸器細胞診の中から,組織診断が確定している肺腺癌の検体を抽出した.最終的に74検体を対象として,細胞診上澄みDNAからEGFR遺伝子変異解析を試みた.なお.これらの74検体は既に組織DNAを用いた解析からEGFR遺伝子変異が判明している(陽性32検体,陰性42検体).その結果,陽性あるいは異型細胞と細胞判定された検体において,組織DNAと細胞診上澄みDNAは正診率94.1%,特異性89.7%の一致性を認めた.しかしながら,陰性と細胞判定された検体において,EGFR遺伝子変異を検出することができなかった.
2: おおむね順調に進展している
現在,「Detection of activating EGFR mutation status using cytology cell free DNA in supernatant from liquid-based cytology in bronchial washing and bronchial brushing samples」のタイトルで海外雑誌に論文を投稿中である.
本研究の目的である細胞診上澄みDNAから遺伝子変異を検出できることは明らかにできた.今後,他の液状細胞検体や他の遺伝子変異などを検索してこの有効性を証明していきたい.
当該年度に購入予定の物品の納品が年度内に出来なかったため.
次年度の予算にて購入予定.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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