研究課題
低酸素環境下でのHOXD3の発現とその転移・浸潤能に及ぼす影響、ならびに低酸素環境下におけるHOXD3過剰発現細胞の動態について検討した。ヒト肺がん細胞A549にHOXD3発現ベクターを導入し、樹立されたHOXD3過剰発現細胞(A549-D3)2系とコントロールの空ベクターを導入したmock細胞(A549-mock)2系ならびにベクター導入前の親細胞(A549-Pa)を、免疫不全マウス(Balb/c nu/nu)の背部皮下あるいは肺内に移植した。移植部位にかかわらず、用いた全マウスにすべての種類の細胞は生着した。皮下移植した場合のA549-D3細胞の増殖は、A549-mockやA549-Pa細胞に比べ遅い傾向がみられた。一方、肺内移植した場合には、すべての種類の細胞はほぼ同じ速度で増殖していることがin vivoイメージングで観察された。形成された腫瘍組織を採材し、現在、血管内皮細胞の分布、低酸素領域の分布(HIF-1alpha、CAIX陽性細胞の分布)、およびHOXD3陽性細胞の分布を免疫組織化学的に解析している。また、in vitroにおけるスフェア形成アッセイを実施したところ、A549-D3細胞は低酸素、常酸素圧環境にかわわらず、コンパクトな単一のスフェアを形成したのに対し、A549-mock細胞は多数の小さなスフェアを形成することがわかった。これらの成果は、HOXD3の発現の有無ががん細胞のin vivoおよびin vitroにおける低酸素応答性に関与していることを示唆している。
3: やや遅れている
HOXD3過剰発現細胞の低酸素環境下におけるin vivoおよびin vitroの腫瘍生物学的性状を対照細胞と比較しながら明らかにすることができた。一方、xenograftモデルを用いて得られた腫瘍組織標本の免疫組織化学的解析は、技術的な問題があり、HIF-1alphaおよびHOXD3の検出を首尾よく行うことができなかった。
今回行った免疫組織化学的解析でうまく検出できなかった分子については、専門家の意見を仰ぐとともに、抗体およびその処理条件の検討等をはかっていく予定である。
Xenograftモデルで形成された腫瘍組織の遺伝子発現プロファイルを調べるためにマイクロアレイ解析を予定していたが、用いる予定の材料の免疫組織化学的解析データを首尾よく得ることができなかった。したがって、マイクロアレイ解析の実施を見送った。
繰り越し分を用いて、平成27年度に実施できなかったマイクロアレイ解析を平成28年度に行う予定である。
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Oncotarget
巻: 6 ページ: 19968-19975