研究課題
我々が樹立した膵がん細胞株2種(PK-8とPK-9と、それぞれに由来するジェムシタビン(以下、GEMと略記)耐性獲得細胞株(RPK-8とRPK-9)を用いて研究を進めた。レンチウイルスを用いて山中4因子を導入してリプログラミングを試みたが、うまく進まず、さらにTETを利用して作成を試みたが、成功しなかった。しかし、この研究を進める中で、興味深い事実が判明した。RPK-9のGEM耐性獲得機序はGEMを細胞内で活性化させるために必須のDCKがホモ欠失しているためであるが、そのため、GEMが極めて高い濃度であっても耐性を示す。他方、RPK-8ではDCKが正常に機能しており、GEMの濃度が100ng/ml程度より高いと死滅する。しかし、親株が死滅する10ng/ml以上でも、100ng/mlまでの濃度領域では生存する。さらに、幹細胞マーカーのいくつかの発現が親株と比較して高いことを見出した。加えて、間葉系マーカーの発現もGEMの濃度依存的に上昇していることを見出した。これらの結果は、薬剤耐性がん細胞がEMTを起こしているようにみられる。さらに、スクラッチアッセイでは親株と比べ有意に細胞の移動能が高まっていた。これらの事実から、幹細胞としての性格を持っているがん細胞の頻度が高いためにEMTを起こしやすく、そのために薬剤耐性能を発揮していることがうかがわれた。今回得られた研究結果から、膵がん細胞をリプログラミングすることでGEM耐性を誘発する危険性があることが考えられた。また、これらの事実から、GEM耐性はどのようながん細胞でも起こりうる可能性も考えられる。この先、どのような機序で膵がん細胞においてEMTと関連するGEM耐性が誘導されるのかを解明する必要性が示された。
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