研究課題
癌の進展における接着分子インテグリンと線維芽細胞増殖因子受容体(FGF受容体)についての解析から、リガンドであるFGF1がインテグリンとFGF受容体の両者に結合し、複合体を形成することがシグナル伝達に重要であることをこれまでに報告している。本研究では、まず癌の浸潤転移に重要である上皮間葉転換(EMT)に着目し、FGF1はEMTを誘導する形質転換増殖因子(TGF-β)が低濃度のときEMTを抑制し、TGF-βが高濃度のときEMTを促進することを明らかにできた。つまりFGF1はEMTの進行に対して正負両方の作用を有し、それはTGF-βの濃度に依存するということである。次にFGF1によるEMT促進のメカニズムに焦点をあてた。EMTのマーカーにはE-カドヘリン、N-カドヘリン、ビメンチン、平滑筋アクチンなどがありE-カドヘリン以外はTGF-βによるEMTの進行に伴い発現が増加することが知られている。明らかにできたことは、FGF1がEMTを促進するとき、それにともないN-カドヘリンの発現量はさらに増加するが、平滑筋アクチン(SMA)の発現は抑制されることが分かった。より生理的な条件で観察するために乳腺上皮細胞の3次元培養をおこないEMTを誘導しFGFを添加するとやはりSMAの発現は抑制された。これよりSMAの発現の低下が癌の進展の指標になり得ることが示唆された。最終年度は、まずインテグリンに結合できない変異型FGF1 (FGF1-R50E) を用いてEMTに伴うSMAの発現メカニズムの解析をすすめた。FGF1-R50E変異体ではEMTに伴う遊走能、浸潤能の促進効果はみられなかった。この時、SMA発現の抑制も見られなかった。これよりFGF1がインテグリンと結合することでSMAの発現が抑制されEMTが促進されることが示唆された。
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Bioscience Reports
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1042/BSR20170173
European journal of Cardio-thoracic surgery
巻: 51 ページ: 457-464
10.1093/ejcts/ezw296.