研究課題
炎症が大腸発癌のリスクファクターといわれて久しい.しかしながら,多段階発癌に占めるどの遺伝子変化が炎症性の発癌と結び付くのかに関しては未だに不明である. そこで本研究の目的は,どのような遺伝子変化を伴う際に炎症発癌に至るのか,すなわち腸管炎症発癌におけるdriver遺伝子を決定し,これまでに提唱されていない炎症性発癌の新たな分子機構を示すことにある.平成26年度に実施した研究は,当初計画に従いマウスより剥離した腸管上皮組織を3次元の培養条件下に置き,この中で組織を再構成・再構築させる実験を行った.既報の手技や実験方法に従い,マウスから腸上皮細胞を腺管単位で剥離し,その後に酵素処理を施すことで単離した腺管を培養維持できる実験系を再現することができた.樹立維持される細胞塊に対してAPC遺伝子などの癌抑制遺伝子をshRNA等によりレンチウィルスを介した発現抑制実験を施行した.その結果,APC遺伝子の発現を抑制すると腺管組織構築が薄く一層に膨潤する形態変化を認めた.次いで,以降の発癌実験に使用することを目論み,発癌する組織が移植細胞起源であることを示すために,GFPトランスジェニックマウスから得た組織を用いて培養化を試みたところ,同様に腸管上皮の培養樹立が可能であることを確認した.さらに,既に入舎済みのK-rasコドン12遺伝子をコンディショナルに活性化させることのできる遺伝子改変ノックインマウスの腸管を用いた培養化を施行した.こちらもほぼ同様に組織を構築できることを確認した.今後は目的の遺伝子発現の制御が起きていることを早急に確認し,27年度の計画研究に移行する.
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の研究実施計画に則った計画実験を遂行し,当該研究の最大の関門であった培養環境下における組織再構築実験をほぼ再現できることを確認した.また,研究期間内に種々の遺伝子改変マウスから得た組織に於いても同様の再現性を確認することができた.しかしながら,これらの組織再構築実験に思いの外時間を要してしまい,当初計画に予定していた目的遺伝子発現の変化の検証を計画年度内に達成することが叶わなかった.遺伝子発現の検証方法は既に検討済みであり,解析予定の組織検体は収集済みであることから,4月中に当初計画を完了できる状況にある.
平成26年度の研究実施計画が概ね計画通り進捗したことより,平成27年度には当初の研究実施計画に則り,炎症を惹起させた組織における発癌実験に移行する.
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