研究実績の概要 |
障害肝由来Thy1陽性細胞をRetrorsine/Partial Hepatectomy (Ret/PH)モデル肝臓に移植すると, Thy1陽性細胞が分泌するExtracellular Vesicles(EVs)により、類洞内皮細胞(SECs)でIL17Bを、Kupffer細胞でIL25を、内在性肝前駆細胞(SHPCs)でIL17RBの発現を誘導することによってSHPCsの増殖が促進されることを報告してきた。しかしながら、誘導されたSHPCsの肝分化機能と運命については未解明である。そこでThy1陽性細胞移植30日後と60日後の肝組織切片からLaser Micro Dissection法でSHPCsを抽出し、遺伝子発現を解析したところ、細胞老化マーカーであるp16、及び肝分化マーカーであるCyp1a2とCyp2b1の発現がコントロール群に比べ、有意に高かった。また、IL25は細胞老化を誘導することが知られているので、小型肝細胞培養にIL17BとIL25を投与して7日間培養し、p16の遺伝子発現を検討したところ、非投与群やIL17B投与群に比べIL25を投与した場合において有意に上昇していた。以上により、細胞移植により誘導されたSHPCsは高い肝機能を持つが、IL25の作用により細胞老化に陥る可能性が示唆された。以上の成果を論文として報告した (Ichinohe et al. STEM CELLS, 2017)。また、IL17RB/IL17B/IL25シグナルを誘導する因子を同定するため、Thy1陽性細胞と骨髄間葉系細胞由来のEVs中に含まれるmiRNAを抽出し、マイクロアレイによる網羅的解析を行い、現在5個の誘導因子を候補として同定している。今後もIL17RBシグナル誘導因子や増殖促進因子を同定していくため、検討を続ける予定である。
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