研究課題/領域番号 |
26460475
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
冨川 直樹 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (80468587)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シグナル分子同定 / ノックアウト細胞株 / リコンビナントタンパク作製 |
研究実績の概要 |
本年度において、クローディン-6上皮分化を誘導するSFKs分子として、前年度に同定されたBlkとSrcに着目し、検討を行った。前年度では、マウスF9幹細胞株でのBlk、Srcのノックダウンを検討したが、ノックダウン効率が低く、顕著な差は見られなかった。そこで本年度では、CRISPR/Cas9法によるゲノム編集技術を使用し、Blk、SrcをノックアウトしたF9幹細胞株を樹立した。これらの細胞株にクローディン-6を導入したが、上皮分化は誘導されなかった。また、これら細胞株では、クローディン-6によるSFKsの活性化が顕著に低下していた。この結果から、クローディン-6による上皮分化誘導シグナルには、BlkとSrcが重要な機能を果たしていることが示唆された。次に、クローディン-6とBlk、Srcが直接的に結合するかどうかを明らかにするために、各分子のリコンビナントタンパク作製を検討した。修飾を保持させるため、すべての分子をバキュロウイルスを使用した昆虫細胞での発現系により、作製を行った。この際、クローディン-6にはHis tagを、BlkとSrcにはN末端にGST tagを、C末端にFLAG tagを付加させた。しかしながら、クローディン-6については、wholeでのタンパク作製は出来なかったため、細胞内C末端ドメインのみのリコンビナントタンパク(Cldn6C)を大腸菌にて作製した。すべてのタンパクにおいて、SDS-PAGE電気泳動後、CBB染色にて、シングルバンドを確認した。また、ウェスタンブロット法によって、各分子またはtagに対する抗体を用いて、目的のタンパクであることを確認した。作製したタンパクを用いて、GST-pulldown法により、Cldn6CとBlk、Srcとの結合性を検討した結果、Cldn6CはBlk、Srcと直接的に結合することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Blk、Src分子の機能解析やクローディン-6との結合性については、ほぼ達成できたが、ES細胞や初期胚での検討も行えなかった。また、成体腸管上皮幹細胞での検討も出来なかったことから、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
クローディン-6とBlkとSrcとの結合性について、どのドメインが重要であるかを明らかにする。具体的には、受容体型チロシンキナーゼとの会合に重要であるBlkとSrcのSH2ドメインに焦点を当て、Blk、SrcのSH2ドメインリコンビナントタンパクを作製し、クローディン-6との結合性を検討する。 ES細胞においても、F9幹細胞株と同様に、CRISPR/Cas9法によるBlk、Srcのノックアウト株を樹立し、クローディン-6導入による上皮分化誘導シグナルへのBlk、Srcの関与を明らかにする。 成体腸管上皮幹細胞においては、本年度までに明らかになったクローディンー6とクローディンー7に焦点を当て、検討を行う。成体腸管上皮幹細胞におけるこれら分子の発現解析を行い、発現が認められた場合には器官培養でのノックダウンを進め、上皮細胞への分化に影響するかを明らかにする。発現が認められない場合には、腸管上皮幹細胞特異的に発現させたノックインマウスを作製し、腸上皮組織過形成などが起こるかを検討する、具体的には、TALEN法により、Rosa26 locusにLgr5プロモーター下にクローディンー6またはクローディンー7を組み込んだtargetベクターを作製し、TALEN mRNAとともにマウス受精卵細胞質へインジェクションし、ノックインマウスを作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ES細胞培養並びに、成体腸管幹細胞の器官培養を行わなかったため、 これらの培養にかかる費用が余剰となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、ES細胞培養並びに、成体腸管幹細胞の器官培養を行う予定であり、 次年度使用額分は適正に使用する。
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