まず、恒常的またはコンディショナルにクローディン-6を発現するF9幹細胞 (F9:Cldn6及びF9 L32T2:Cldn6)を用いて、クローディン-6と相互作用して上皮分化を誘導するSFK分子の同定を行った。その結果、Src、Blk、HcK、Fgrがクローディン-6発現とともに、活性化していることが分かった。また、HEK293細胞にクローディン-6と各SFK分子の遺伝子を導入し、免疫沈降を行ったところ、SrcとBlkがクローディン-6と相互作用することが分かった。更に、GDT融合SrcとBlk、FLAG tag融合クローディン-6C末端ドメインのリコンビナントタンパクを作製し、GST pull down法とELISA法により検討した結果、SrcとBlkはクローディン-6C末端ドメインと直接的に結合することが明らかとなった。そこで、CRISPR/Cas9を用いてSrcとBlkをノックアウトしたF9:Cldn6細胞株を樹立したところ、それぞれのノックアウト細胞株では、クローディン-6による上皮分化誘導が顕著に減少した。 次に、SFK分子の下流シグナル分子の同定を行った。様々な阻害剤を用いた検討から、PI3K、Akt、mToRがSFKの下流シグナル分子としてクローディン-6の上皮分化誘導に機能していることが分かった。また、核内受容体であるレチノイド受容体とエストロゲン受容体について検討した結果、クローディン-6の上皮分化誘導シグナルは核内受容体であるレチノイド受容体とクロストークすることが示唆された。これらの結果から、クローディン-6はSrc、Blkと直接的に結合し、PI3K、Akt、mToRを介して、レチノイド受容体とクロストークし、上皮分化を制御していることが明らかとなった。
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