研究実績の概要 |
我々はこれまでに、膀胱尿路上皮癌細胞(urothelial carcinoma, UC)は、正常尿路上皮細胞に比して活性酸素種(ROS)を過剰に産生し、これが癌の発生や進展に深く関与することを報告した(Shimada K. et al. BMC Urol 2011, Clin Cancer Res 2012)。一方、ROSは酸化ストレスによって異常蛋白質の蓄積を介してERストレスならびに細胞死をもたらすことが知られている。そこで、細胞内に蓄積した異常蛋白質を効率よく分解するユビキチン・プロテアゾーム関連分子に着目し、UCと正常尿路上皮細胞とを網羅的に比較検討したところ、異常蛋白質をプロテアゾームに効率よく運搬する足場蛋白質、ubiquilin2がUCにて高発現することを発見した。 平成26年度は、この分子を標識することで尿中に剥離した細胞から癌細胞を効率よく検出できるか否かを検討した。本分子に対するモノクロ―ナル抗体を作製し、自然尿検体中の剥離細胞に対して免疫細胞染色を行ったところ、尿細胞診の診断精度、特に診断感度に改善が認められた(感度90.9%、特異度98.6%)。中でも、高異型度・浸潤性 UCについては、核に強く染色される傾向があり、陽性細胞を検出しやすい利点に加え、尿細胞診の段階で悪性度を推定できる。また、尿管カテーテル尿、腎盂尿など上部尿路系腫瘍の検体においても同様の傾向を確認できた(Shimada K et al. Diagnostic Cytopathology, in submission)。
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