研究課題/領域番号 |
26460477
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
島田 啓司 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (90336850)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 尿路上皮癌 / SIRNA / 活性酸素種 / ユビキリン2 |
研究実績の概要 |
我々は平成26年度の検討結果にて、この分子を標識することにより尿中剥離細胞中から癌細胞を効率よく検出できることを明確に報告することができた。平成27年度は、種々のUC細胞株を用いubiquilin2 gene silencing(siRNA導入法)手法によって、ubiquilin2のROS誘導性細胞毒性に及ぼす影響を解析した。その結果、尿路上皮癌細胞はubiquilin2のgene silencingによって、apoptosisが誘導され、細胞生存、増殖が強く抑制されることが分かった。ubiquilin2ノックダウンによる細胞毒性はROS scavengerを加えることで抑制される一方、細胞内ROSに有意な変化は認められなかったことから、ubiquilin2は細胞内ROS産生を制御するのではなく、ROSに対するdefense systemに影響することが分かった。そこで、unfolded protein response (UPR)に深くかかわる足場タンパク質群を網羅的に解析した結果、ubiquilin2は、Heat shock protein familyの一つであるGRP78の発現の安定化に関わることを見出した。GRP78のノックダウンにより尿路上皮癌細胞にapoptosisの誘導を認めた。以上から、ubiquilin2は、GRP78安定化を介してUPRを維持し、細胞内で大量に産生されるROSから癌細胞を保護する役割をになうことで、ROSを介する尿路上皮癌進展メカニズムに深く関与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで蓄積したROSと尿路上皮癌細胞との分子生物学的関連性に関するデータを参考に、実験計画を立案でき、troubleshootingにも対応できたため。また、本研究は科学技術振興機構の資金協力を得て、国内及びPCT出願を行い、現在、米、英、独、仏に順次、各国移行を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、種々のUC細胞株を用いubiquilin2 gene silencing(siRNA導入法)手法によって、ubiquilin2の細胞毒性メカニズムをより詳細に検討する。具体的には、buiquilin2が尿路上皮癌細胞のROS感受性を高めるメカニズムに、stress kinaseであるMAP kinaseやその上流分子がどのように関与するのか、その発現や活性に及ぼす影響をin vitroで解析する。また、同所性移植実験を行い、in vitroで得られた実験結果の再現性をin vivoで確認する予定である。これらの基礎データから、ubiquilin2がUCの生存に不可欠な分子であると考えられれば、ubiquilin2の機能を遮断しうる薬剤を特定し、あらたな腎盂・尿管、膀胱癌治療指針を構築できると期待される。
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