研究課題
多発性骨髄腫(MM)は単クローン性γ-グロブリンの産生を特徴とする難治性腫瘍である。小胞体(ER)内腔に不良タンパク(unfolded protein )が蓄積すると,ユビキチン化されてプロテアソームで分解されるが,この許容量を上回る不良タンパクの蓄積によりアポトーシスが誘導される。筆者はこれまで, ユビキチン-プロテアソーム系とオートファジー-リソソーム系およびER 三者間の細胞内ネットワークに着目してきた。難治性MM の新規治療を目指して,本研究では①筆者らが発見したマクロライド系抗生剤のオートファジー阻害活性における「標的分子」の同定を行い,②プロテアソーム阻害剤とマクロライドとの同時併用で期待されるER ストレス負荷を介した強力な細胞死誘導効果を,「分子レベル」と動物実験による「治療効果」の両面から検証することが本研究の主目的である。各種マクロライド抗生剤の中で,15員環マクロライド化合物であるアジスロマイシン(AZM)が最も強いオートファジー阻害活性を発現することが判明した。また,プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BZ)との併用により細胞内二大タンパク質分解機構を同時に阻害することで,ERストレス負荷の増大,特にアポトーシス誘導性転写因子CHOPを介してMM細胞のアポトーシスが効率的に誘導されることを明らかにした。このAZMのオートファジー阻害活性における標的分子を同定する目的で,機能性磁性ナノ粒子(FGビーズ)にAZMを固相化し,アフィニテイー精製による「AZM結合分子」同定が進行中である。現在FGビーズ表面に光感受性クロスリンカーを用いたAZM固相化の至適条件もほぼ確立した。
2: おおむね順調に進展している
各種マクロライド系抗生剤の中で,アジスロマイシンがクラリスロマイシン,エリスロマイシン,ジョサマイシンに比して最も効果的にオートファジーの流れ(flux)と止める作用を有することが明らとなった。また,ボルテゾミブとの併用時における骨髄腫の殺細胞効果ならびにERストレス増強負荷は,これらマクロライドのオートファジー阻害効果の比活性と一致し,AZMとBZとの併用が最もと強力な殺細胞効果の増強が観察された。また,機能性ナノ粒子(半田ビーズ)へのAZMの固相化条件設定もほぼ確立した。
AZN固相化機能性ナノ粒子を用いたアフィニテイー精製に質量分析を組み合わせることで,マクロライド抗生剤におけるオートファジー阻害活性の標的タンパク質の同定を継続して進める。また,骨髄腫細胞株をNODマウスに移植し,BZとAZM併用による抗腫瘍効果の優位性を検証する予定である。
「210円」と少額未使用のため次年度に繰り越す。
少額のため次年度に繰り越す。
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Autophagy
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http://www.tokyo-med.ac.jp/target/