研究課題
細胞内にはオートファジー・リソソーム系とユビキチン・プロテアソーム系の2つの主なタンパク質分解系が作動している。細胞内アミノ酸のリサイクル機構として機能しているオートファジーは、現在までに、低酸素・低栄養環境下でのがん細胞の増殖の他、がん幹細胞の維持にも重要であるとの報告がなされている。これまで筆者は、オートファジー及びユビキチン・プロテアソーム系のタンパク質分解系の制御を介した新規がん治療法の開発を目指してきた。興味深いことに、アジスロマイシン(AZM)を中心とするマクロライド系抗生物質は、本来の抗菌活性の他にオートファジー抑制効果を有し、プロテアソーム阻害剤をはじめとする他の抗がん剤と併用することで、強い抗腫瘍効果を発揮することを発見した。また、アミノ酸飢餓条件下でマクロライドを添加することにより各種がん細胞株に対して強い殺細胞効果を発現することも明らかにした。このことは、オートファジーはがん細胞に対して“細胞保護的”に機能し、種々の抗がん剤による細胞死を回避させていることを示しているものである。これより、オートファジー阻害剤の開発は抗がん剤による治療効果を改善する可能性を示している。多発性骨髄腫細胞株を用い、マクロライド系抗生物質であるAZMやクラリスロマイシン (CAM)と、ユビキチン・プロテアソーム系阻害剤のボルテゾミブ(BZ)とを併用し、細胞内の二大タンパク質分解系を同時に阻害することで、ERストレス負荷が著増し、CHOP誘導を介してアポトーシスが強力に誘導される効果を発見した。この現象は、ストローマ細胞と各種骨髄腫細胞株との共培養系でも再現できた。これより、難治性骨髄腫に対するプロテアソーム阻害剤とマクロライド併用による”ERストレス誘導療法”の新規治療戦略の可能性が示された。
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