研究課題/領域番号 |
26460482
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
藤井 誠志 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, ユニット長 (30314743)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒストン |
研究実績の概要 |
研究全体を通しての目的は、がん化、がん細胞の進展におけるヒストンH3 バリアントの取り込みとヒストン修飾の変化による転写制御を明らかにすることである。平成27年度の2年目以降の研究計画は、ヒストンH3 バリアントの取り込み誘導因子を明らかにし、臨床病理学的な解析を行うことである。 1.ヒストンシャペロンによるヒストンバリアントの取り込み調節が遺伝子発現に与える影響について~これまで、腫瘍抑制遺伝子の転写はヒストンバリアントの取り込みとヒストン修飾の連動によって制御されることを見出したが、この制御がヒストンバリアントの取り込みを行うヒストンシャペロンによって起こることを見出した。 2.がん関連線維芽細胞に発現し、ヒストン修飾機構によって発現誘導される候補遺伝子TEM1が胃癌患者の予後不良因子である~昨年度、がん関連線維芽細胞において、ヒストン修飾機構によって発現誘導される候補遺伝子TEM1を見出していたが、がん関連線維芽細胞におけるTEM1の発現が胃癌患者の予後不良因子であることを見出し、その内容を論文にて発表した。現在、この遺伝子の発現機構について詳細に検討しているところである。 3.血管内皮細胞の形質変化におけるヒストン修飾の役割~癌細胞のみならず、癌組織中の間葉系細胞にもヒストンバリアント、ヒストン修飾が関与して遺伝子発現を変化させる可能性を見出し、早期扁平上皮癌組織において増生する微細血管の内皮細胞増生機構について検討した。扁平上皮癌組織で有意に増加する因子が血管内皮細胞に働き、ヒストン修飾タンパクの発現を上昇させた。その発現上昇したヒストン修飾タンパクが血管分岐、増生を阻害する遺伝子の転写を抑制的に制御した。この結果は、微細血管の増生が扁平上皮癌組織で起こる背景には、血管内皮細胞の形質がヒストン修飾によって変化することが関係していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度以降に計画した、「ヒストンH3 バリアントの取り込み誘導因子を明らかにし、臨床病理学的な解析を行う」ことに関連して、ヒストン修飾機構によって発現誘導される候補遺伝子TEM1についての臨床病理学的な意義や扁平上皮癌組織を構成する血管内皮細胞の形質変化におけるヒストン修飾の役割について順調に解析を進めることができた。さらに、前年度の検討に続いて、ヒストンシャペロンによるヒストンバリアントの取り込み調節による遺伝子発現機構についても解析し、最終的なアウトプットである遺伝子発現変化におけるヒストンシャペロンの役割を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、1年目、2年目と順調に研究を進めることができており、先に間葉系細胞におけるヒストン修飾とヒストンH3 バリアントの取り込みの役割について解析した。最終年度には、細胞分化誘導シグナルとヒストン修飾活性化シグナルに着目し、それらのシグナルがヒストンH3 バリアントの取り込みに与える影響について、これまでと同様に計画通りに研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
最後に抗体を購入をしようしたが、電子入札額が希望購入額よりも高額であったため、購入を断念した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にそれを購入する予定である。
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