研究課題/領域番号 |
26460485
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | NASH |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、飲酒歴がないにもかかわらず中性脂肪を主とする脂肪の蓄積が肝細胞に起こり、炎症・線維化等のアルコール性肝障害と同様の所見を認める疾患である。本邦では200万人以上の罹患者がいると推定され今後も増大することが予想されており、その一部には肝硬変、肝癌まで進行することから、その対策が社会的急務となっている。申請者らは、p62ならびにNrf2を二重欠損させたマウス(DKOマウス)を作製し、これがヒトNASHの病態と非常に類似した表現型を示す、これまでに無い優れたNASHモデル動物であることを見出した。本研究は、この新しいNASHモデルマウスの病態発症メカニズムを解明することを目的としている。 昨年度までに、明らかとなったDKOマウスにおける腸管上皮組織には萎縮や脱落があることを明らかにし、バリア機能が低下していることが示唆されたため、今年度はまず腸管の透過性についての試験を行った。FITC-デキストランを経口投与したのち、血中に吸収された量をFITC蛍光量を測定することで腸管の透過性を評価した結果、DKOマウスは有意に吸収量が高く、腸管透過性が亢進していることが明らかとなった。さらに、それを裏付けるように、血中に含まれるエンドドキシン量を測定すると、DKOマウスは野生型、Nrf2-KO、p62-KOマウスと比べ高濃度のLPSを含んでいた。これらのことから、DKOマウスは、腸管上皮組織の脆弱化により透過性が亢進し、腸内細菌に起因するLPSの取り込みが上昇することにより高エンドトキシン血症となり、肝臓における炎症が惹起されることがNASH発症の一因となっていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
腸管の透過性がDKOマウスで亢進していることを定量的に明らかにできた。さらに、高LPS血症となっているにことが示され、NASH発症機序の大きな要因が解明できた。
|
今後の研究の推進方策 |
高LPS血症であることがNASH発症の要因であると考えられることから、腸内細菌叢の変化を4系統のマウスで比較し、なぜDKOマウスでNASHが発症するのかについてさらに踏み込んだ解析を行う。また、その機序について、過食肥満の観点から解析を加える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に行った実験に必要な試薬が予定額より安価で入手できたため、少額の次年度繰越金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に必要となる試薬購入のための物品費として使用する。
|