研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、飲酒歴がないにもかかわらず中性脂肪を主とする脂肪の蓄積が肝細胞に起こり、炎症・線維化をきたす致死的疾患である。本邦では 200 万人以上の罹 患者がいると推定され今後も増大することが予想されており、対策が社会的急務となっている。 申請者らは、p62 ならびに Nrf2 遺伝子を二重欠損したマウスを作製し、これがヒト NASH 病態 と非常に類似した表現型を示す、これまでに無い優れたモデル動物であることを見出し、その発症機序について解析してきた。今年度は、肝Kupffer細胞と腸に主眼をおき、本マウスのNASH発症機序をin vivo、in vitroの両面から検討した。野生型、p62-KO、Nrf2-KO、DKOマウスCRISPR-Cas9システムを用い、各遺伝子を欠損したRaw264。7(マウスマクロファージ由来細胞)、Caco-2(ヒト腸管上皮由来細胞)を作成した。Raw264。7ではLPSによる炎症反応を、Caco-2ではバリア機能を評価して、NASH発症機序における各遺伝子の機能を検討した。Raw264。7細胞のLPSによる炎症反応は、p62欠損により増悪した。Nrf2欠損ではさらに著しい増悪がみられた。また、Caco-2細胞のタイトジャンクションタンパク質の発現は、Nrf2欠損により低下した。DKOマウスでは若齢時より、Nrf2欠損による腸管のバリア機能低下、および肝Kupffer細胞のLPSに対する過剰な炎症反応が生じており、さらに、p62欠損による過食肥満、腸内細菌叢の変容、LPS産生の増大が同時に進行することでNASHへと進展していくものと推察された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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