研究課題
日本では毎年約1000人の神経障害をもった症候性サイトメガロウイルス(CMV)患者が発生している。ダウン症につぐ大きな先天異常であり毎年膨大な医療費を必要とする。今回の研究ではヒトiPS細胞から3次元大脳組織を作成するという新しい技術を用いて、申請者らが提唱してきたマウス大脳CMV感染モデルをヒトモデルで検証する予定であった。そしてヒトCMV中枢神経感染特有の新たな病理機序の解明や治療法につなげることを目的としていた。実験を進めるにあたって、iPS細胞から3次元大脳培養を成功させることが難しく、当初の計画通りに実験は進まなかった。しかしその過程でCMV血行感染における初期感染モデルの解明が進んだ。マウスモデルを用いたCMV血行感染初期ではCMV陽性細胞は大脳全体にびまん性に拡がる。CMV感染細胞の約7割は血管内皮細胞、約1-2割は血管周皮細胞(pericyte)であり、初期感染部位は主にneurovascular unitであることが確認できた。蛍光CMV粒子で初期感染の分布を確認すると、ほとんどのCMV粒子はBBBによって留められていた。これは感染初期にはBBBがCMV粒子に対して機能的に働いていることを示す結果であった。感染後しばらくするとBBBの破綻を引き起こし血管周囲にウイルス感染が広がることもわかった。血行感染でも神経幹/前駆細胞に感染が及び、胎生中期~後期における神経幹/前駆細胞へのCMV感染が細胞増殖・神経新生を抑制し、小頭症を引き起こすことがわかった。大脳透明化にも成功し、血管の分布とウイルス感染の3次元的な分布をコンピュータ画像上にこれらの結果はAmerican Journal of Pathology誌、Journal of Visualized Experiments誌、Pathology International誌に論文を発表した。
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