研究課題
骨粗鬆症の予防法を持続的で確実な効果が期待できる骨吸収細胞である破骨細胞の分化調節に求めてきた。その結果、破骨細胞分化には骨髄内のT細胞と腹腔細胞による調節機構が存在し、後者は再生能がないため一度失うと発症の可能性が増加することを見出した。「骨疾患治療の標的は骨組織だけではなく腹腔にもある」という観点で、破骨細胞分化調節機構を検討した。破骨細胞前駆細胞(OCp)から多核の酒石酸抵抗性酸性脱リン酸化酵素(TRAP)陽性の破骨細胞への分化機構をマウス生体と細胞培養法により検討し、1)骨髄細胞からCD4+ あるいはCD8+ 細胞を除去すると、OCpからM-CSFとRANKLの添加で誘導される破骨細胞数が半減すること。2)腹腔に3 mlの蒸留水を注入して低張処理すると、骨髄細胞からのM-CSFとRANKLの添加による破骨細胞分化が半減すること。この低張処理の効果はその後1年以上維持されること。3)T細胞欠損マウスでは低張処理で破骨細胞数減少は起こらず、低張処理マウス骨髄からのT細胞除去もそれ以上の減少は見られないことを観察した。腹腔には破骨細胞分化調節に関与する細胞、骨髄には調節T細胞の存在が示唆された。低張処置マウスの症状は骨粗鬆症モデルの卵巣摘出術(OVX)施行マウスと類似していた。腹腔低張処理後、骨組織に存在する成熟破骨細胞(骨組織切片のTRAP陽性細胞の面積で評価)はむしろ2倍程度増加していた。このことは、低張処理により骨髄T細胞への作用により、抑制されていた破骨細胞分化が亢進し、骨吸収が増加したと考えられる。この点もOVX処置マウスと類似していた。興味あることに、この低張処理は雄雌ともに効果を示すことからもOVXによる骨粗鬆症の真の原因を明らかにできると予想できる。残念ながら、まだ腹腔中の標的細胞の同定には至っていないが、本研究の目標とした骨組織の内と外からの破骨細胞分化制御について新しい知見を見出すことが出来た。
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Biochemistry and Biophysics Reports
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.bbrep.2017.04.007
Biology (Basal)
巻: 9 ページ: 5
10.3390/biology5010005
http://www.med.tottori-u.ac.jp/immunol/5983.html