我々は、8-オキソグアニン(8-oxoG)のゲノム蓄積を制御するMTH1、OGG1、MUTYHがマウス黒質ドパミン神経細胞に発現していることを明らかにしている。本研究ではパーキンソン病(PD)の発症機構に注目し、「酸化ストレスがドパミン神経変性を引き起こす分子機序」に8-oxoGの蓄積とMTH1、OGG1、MUTYHがどのように関わるかを解析した。 薬物性PDを誘発するMPTPを投与したOGG1/MTH1二重欠損(OGG1/MTH1-DKO)マウスは、野生型マウスと比較してオープンフィールドで多動、運動亢進を呈することが明らかになった。MPTPを投与したOGG1/MTH1-DKOマウスは野生型マウスに比較して、より顕著な握力低下を示した。さらにhMTH1を高発現するMTH1トランスジェニックマウスは、MPTP投与による運動亢進に対して顕著な抵抗性を示すことが明らかになり、MTH1とOGG1 は黒質ドパミン神経細胞を保護する可能性が示唆された。 野生型、OGG1-KO、OGG1/MUTYH-DKOマウスについて、MPTPを投与しないコントロール群とMPTP投与群について行動解析を行った。MPTP投与により野生型およびOGG1-KOマウスは運動亢進を示したが、OGG1/MUTYH-DKOマウスは運動亢進を示さず、MPTPに抵抗性である可能性が示唆された。握力試験でははっきりとした差は認められなかったが、MUTYH によって開始されるDNA修復反応が黒質ドパミン神経細胞変性の引き金となる可能性が示唆された。 行動解析後のマウスの剖検脳を回収し、核とミトコンドリアDNAにおける8-oxoGの蓄積、ドパミン神経変性の脱落、グリオーシスに注目して病理解析を行い、さらに神経変性経路の活性化について検討した。現在、これらのデータの解析を行っており、近日中に論文として投稿する予定である。
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