研究課題/領域番号 |
26460492
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
内木 綾 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20509236)
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研究分担者 |
高橋 智 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60254281)
鈴木 周五 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60363933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NASH / 細胞間コミュニケーション / 疾患モデル / フラボノイド |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎、Non-alcoholic steatohepatitis (NASH)の発生率は近年増加しており、肝硬変や肝癌へ進展する危険性や、病態の進展に対する酸化ストレスの関与が指摘されている。我々はこれまでに、肝細胞ギャップ結合タンパクconnexin32(Cx32)のドミナントネガティブトランスジェニック(Tg)ラットを作製し、Cx32の肝発がん抑制作用を報告してきた。NASHに対するCx32の機能は不明であるが、最近の研究から、Cx32が酸化ストレス抑制作用を有することがわかり、NASHに対するCx32や抗酸化物質の摂取による予防効果が期待される。 本研究では、NASHにおけるCx32の機能を解析するため、10週齢雄Tg、野生型(nTg)ラットにdiethylnitrosamine(200 mg/kg)を腹腔内投与した2日後からメチオニンコリン欠乏飼料を投与しNASHを惹起した。また、フラボノイドの一種で、抗酸化作用を有するluteolinの化学予防効果を検討するため、各々のラットにluteolin混餌投与(100 ppm)群を設け12週間後に解剖を行った。 Cx32の作用:nTgと比較し、Tgラットでは、肝炎症細胞浸潤・線維化の程度、前癌病変(GST-P陽性細胞巣)の発生個数、活性酸素・TgfβmRNA発現レベルの亢進を認めた。Luteolinの作用:Tg、nTgラットいずれも脂肪変性、炎症、線維化および酸化ストレスが改善された。また、TNFα、Tgfβ、IL-1βmRNA発現低下を認めた。Tgラットでは、肝前癌病変の発生個数が減少した。 以上より、Cx32およびluteolinは、酸化ストレス制御を介してNASHの進展やNASH関連肝発がんを抑制することが明らかとなり、NASH予防法への応用の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、個体レベルの実験系において、Cx32はNASHの進展およびNASH関連肝発がんを抑制することが明らかとなった。この結果は、研究計画時に想定した通りであり、今後の詳細なメカニズム解析が円滑に行えるものと考える。 また、luteolinの経口摂取がNASHの化学予防効果を発揮することが明らかとなった点からは、本研究の今後の進展により、ヒトNASHに対する化学予防法への応用に寄与できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
①GJICによるNASH進展抑制効果に関わる遺伝子の同定と培養細胞を用いた機能解析 1.GJIC機能異常に伴う遺伝子発現変化の解析:NASHの進展には、脂肪変性、炎症細胞浸潤や線維化の過程が存在し、GJICの機能異常によりNASHの進行度が亢進することが予測される。本研究ではマイクロアレイ解析を行い、Cx32ΔTgとnTgラットの肝における遺伝子発現変化を比較することで、NASHの進展に対するGJICの抑制効果に関与する分子の抽出を試みる。 2.遺伝子網羅的解析により同定した遺伝子の機能解析:申請者らは以前にラット肝癌細胞株(HSU-C2,C6)を樹立し、ヒト肝癌と同様にラット肝癌細胞C6においてもCx32発現の低下とGJIC機能阻害が見られることを確認している。このラット肝癌細胞C6に対して、マイクロアレイ解析で同定した遺伝子の強制発現操作を行い、GJIC機能、酸化ストレス誘導および肝癌細胞の増殖に対する影響を検証する。 ②NASHの各過程におけるCx32タンパク発現とGJIC機能の定量解析 NASHの脂肪化相におけるCx32発現の低下は予備実験により確認されたが、線維化相を含むより進行した過程におけるCx32発現やGJIC機能の変化はわかっていない。そこで、NASHの各段階におけるCx32発現および局在の変化を、蛍光免疫組織学的に検討する。またDye loading assayによりギャップ結合を通過する小分子蛍光色素、lucifer yellowの拡がりを蛍光顕微鏡BZ-9000により測定し、GJIC機能を定量解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に遂行され、当初予想したよりも消耗品や試薬の購入費を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度使用した動物モデルを用いた、新たなNASH予防候補物質の探索のための動物購入費用、投与試薬費用および標本作製費用として使用する。
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