研究課題
前年度までに、肝細胞ギャップ結合タンパクConnexin 32 (Cx32)およびフラボノイドのluteolinが、NASHの進展やNASH関連肝発がんを抑制することを明らかにした。本年度は、wild-type (Wt)ラットのNASH進展過程におけるCxタンパクの発現変化とNASH関連肝発がんを制御する遺伝子の同定を試みた。Cx32およびCx26タンパクは、肝細胞における主要なギャップ結合タンパクで、正常肝細胞の膜に発現している。NASHを発症したWtラットの肝では、NASH誘導に使用したメチオニン・コリン欠乏飼料の投与2、12週時のいずれにおいても、肝細胞膜上のCx32およびCx26発現は減少しており、NASHの進行度と逆相関関係を示した。一方で、luteolin投与によりCx32およびCx26発現の減少は軽減された。NASHを誘発したCx32ドミナントネガティブトランスジェニック(Tg)ラットおよびWtラットおよびそれぞれにluteolinを投与したラット肝を用いてcDNAマイクロアレイ解析を行った。TgでWtラットより発現が高く、luteolin投与により発現低下する、肝発がん感受性と連動して発現変動する遺伝子として、brain expressed, X-linked 1 (Bex1)が同定された。定量的RT-PCRにより、Bex1の発現はWtと比較してTgラットで有意に高く、いずれのジェノタイプにおいてもluteolin投与により減少した。またBex1 mRNAは肝細胞およびGST-P陽性細胞巣に局在することがin situ hybridizationにより明らかになった。さらにGST-P陽性細胞巣内のBex1 mRNAの染色強度を検討すると、TgラットではBex1が高発現する細胞巣が多く、luteolin投与によりその発現が低下することがわかった。以上より、NASH関連肝発がんへのBex1の関与が新たに明らかとなり、その予防や治療の標的になりうる可能性が見い出された。
2: おおむね順調に進展している
NASHに対するCx32およびluteolinの予防作用を解明した。この結果およびそれぞれの作用に酸化ストレスが関与している点は、研究計画時に想定していた現象で、これまでの研究は、計画通りに実施されている。
①肝細胞および肝癌細胞の増殖能に対するBex1の機能解析ラット肝癌細胞株HSU-C2およびHSU-C6に対して、siRNAを用いてBex1ノックダウンを行い、肝癌細胞の増殖能や増殖シグナルタンパク発現に対する影響を検討する。また、ラット正常肝細胞Clone 9にBex1遺伝子を導入した安定細胞株も作製し、増殖能や増殖シグナルタンパク発現に対する影響を検証する。②高脂肪食誘導NASHモデルの解析本研究では、NASHの誘導にメチオニン・コリン欠乏飼料を用いているが、よりヒトのNASH発症の背景と模倣したモデルを作成するため、高脂肪食投与によりNAFLDおよびNASHを誘導し、メチオニン・コリン欠乏飼料によるモデルとの比較をする。
平成28年1月7日 富山市主催セミナーにおける講演(招待講演)講演タイトル「ルテオリンの非アルコール性脂肪肝炎およびがん化に対する予防効果」
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Oncotarget
巻: 7 ページ: 2009-2021
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http://www.nagoya-cu.ac.jp/about/press/press/release/files/169397/271023.pdf