研究課題/領域番号 |
26460494
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
中野 泰子 昭和大学, 薬学部, 教授 (20155790)
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研究分担者 |
根来 孝治 昭和大学, 薬学部, 講師 (70218270)
谷岡 利裕 昭和大学, 薬学部, 助教 (80360585)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アディポネクチン / マクロファージ / 高分子量アディポネクチン / 易炎症性 / 低アディポネクチン血漿 / アディポネクチントランスジェニックマウス |
研究実績の概要 |
RAW264.5細胞の10μg/mLHMWアディポネクチン有り無しで48時間処理後のGeneChipアッセイの結果、HMW処理で劇的な変化は認められなかったが、ケモカインレセプターやIL-1などからのシグナル系、PLD4やAlox5など炎症性物質産生に関与する遺伝子の発現低下、CHOPなど転写を阻害する遺伝子、metallothionein 1や2、solute carrier family、IFNにより誘導される種々のタンパク、NosやPG合成系のPla2やPtgs、cAMPに応答するCreb3やAtf3、NFkBの活性化を抑制するHSPなどが増加していた。これらの変化を踏まえて、ヒト血漿から精製したHMWアディポネクチンや、ヒトやマウスのCHO細胞での組換えアディポネクチン、球状ドメインのみのグロブラーアディポネクチンを用いて、前処理での変化、その後のLPS処理への応答について詳細に解析を行った。その結果、前処理無しではLPSに対する応答を抑制しないが、前処理4時間以上でLPSによるIL-1βの発現を抑制すること、一方、これまで報告されているようなTNF-αの発現抑制は起こらないことが全てのアディポネクチンで確認できた。アディポネクチンによる効果は、AKTのリン酸化(活性化)阻害によりAKTがGSK3βをリン酸化(不活性化)できず、GSK3βがC/EBPβをリン酸化してC/EBPβの核移行を阻害することにより、IL-1βの発現が抑制されることによることが分かった。更に、AMPKをAICARで活性化してもこの抑制効果は認められないことや、PI3K阻害剤で同様の効果が認められること、HSPがアディポネクチン前処理で誘導されているにも関わらずNFkBの阻害は起こらず、結果としてTNFαの発現抑制は起こらないなど、アディポネクチン48時間処理による変化やこれまで報告されているAMPK経路、PI3K/PIP3経路だけではその後の応答が説明できないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要の項に記載したように、アディポネクチン48時間処理による遺伝子発現変化だけでは、その後のLPSへの応答が説明できず、現在、アディポネクチンの個別のシグナル経路の解析を行っており、cAMP/PKA経路、PLC/Ca2+経路の貢献に関する検討が終了していない。 一方、in vivoでの状態を確認するために、当教室が所有する血中アディポネクチン濃度が低いアディポネクチンアンチセンストランスジェニックマウス (adiponectin anti-sense transgenic mouse) と野生型マウスを用い、その表現型の解析を開始しているが、平成26年度は、マウスの遺伝背景の確認と、8週令と15週令の血漿、尿の採取、臓器として脂肪、骨格筋、肝臓、胸腺の採取、8週令の脾臓細胞の解析を実施した。これらについても、解析を一部開始しているが、組織解析用に組織を包埋して保存した段階だったり、遺伝子発現解析については総RNAを調整している段階であるなど、材料採取が終了した段階で、その後の解析はまだ進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
アディポネクチン処理によるLPS刺激に対する応答抑制へのcAMP/PKA経路、PLC/Ca2+経路の寄与について検討を進める。また、AMPKをリン酸化するメトホルミンやアディポネクチンはAMPKのリン酸化を介してPPAR-αを活性化するがこのPPAR-αを活性化するフィブラートの効果、また、cAMPを増やすために非選択的なPDE阻害薬カフェイン、テオフィリンや、その他選択的PDE阻害薬など、さまざまな疾病の治療に使用されている医薬品を用いて、アディポネクチンによる炎症抑制作用の再現について検討する。 一方、in vivoでの状態を確認するために、上記したようにアディポネクチンアンチセンストランスジェニックマウスと野生型マウスの表現型解析を26週令まで行い、また、採材が終了している試料を用いて、血漿と尿のアミノ酸組成解析、血漿の各種サイトカイン解析、各臓器の形態や遺伝子発現解析など、詳細な表現型の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、動物実験の材料採取に時間がかかり、試料の調整が完了しておらず、解析がまだ実施できていない。従って、GeneChip解析依頼や、血漿中のサイトカインなどを解析するためのELISAキットなどの試薬などを購入していない。平成27年度に以上のことを実施するために、次年度使用額として温存している。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、消耗品費95万円、業務委託費76万円(総額171万円)を想定している。内訳は以下の通り。 脂肪組織や骨格筋組織の遺伝子発現状況を解析するために、GeneChipによる解析(19万円x4、トランスジェニックマウスと野生型の比較で組織2種、オス・メス)を行いたい。細胞培養用培地やウシ胎児血清等の試薬(15万円)、培養プレートや各種チューブ等のプラスチック器具(10万円)、血中サイトカイン等測定キット、組織染色試薬、免疫組織染色やイムノブロット用各種抗体やAMPK活性、cAMP測定などの各種測定キット等の生化学試薬(50万円)及び遺伝子導入試薬やqRCR試薬等の分子生物学試薬(20万円)が必要である。以上、計画の実施上重要な経費であることより、妥当な経費と判断している。
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