CAMDIノックアウトマウスの行動解析 胎児大脳皮質の神経細胞移動に重要な役割を担うことが明らかとなった新規分子CAMDIのノックアウトマウスを解析した。発現阻害同様にノックアウトマウスにおいても神経細胞の遅れが認められた。遅れた神経細胞の軸索は、本来の投射先ではなく、遅れた層に存在する細胞と同じ部位に投射していた。すなわち、異なる性質を持つ神経細胞が異所的に軸索を投射していた。行動解析を行ったところ、多動、繰り返し行動、新規環境への適応の障害、抑うつ状態の増加、社会的相互作用の減少、不安行動の増加が認められた。これらの表現型は、自閉症患者に認められる症状と酷似していた。 CAMDIに結合する蛋白質をスクリーニングした結果、CAMDIはHDAC6と結合してその活性を抑制することを明らかにした。安定化した微小管はアセチル化されていることが知られているが、HDAC6はその微小管の脱アセチル化を制御する。中心体の中心子は微小管骨格からなり中心体にCAMDIが局在することから、CAMDIによる中心体のアセチル化を調べた。その結果、CAMDIノックアウトマウスにおいて中心体画分における微小管のアセチル化が減少していた。中心体の構成成分であるγ-tubulinも減少していたことから、中心体が未成熟であることが明らかとなった。 神経細胞の移動では、中心体の挙動が重要であることが知られている。そこで神経細胞の移動が行われる胎児期にHDAC6の特異的阻害剤であるTubastatinAを投与することで表現型の回復を試みた。その結果、神経細胞移動と共に、一部の行動試験において回復が認められた。これらの結果は、胎児期に治療を行うことで、自閉症様行動を回復させることができる可能性を示唆している。
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